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読書メモ⑩

 今回は児童文学です。

『ほらふき男爵の冒険』G.A.ビュルガー:編 斉藤洋:文 はたこしろう:絵(偕成社)

 Han Luさんのところでkobuupapaさまが話題にしてるのを見かけた後、図書館で見つけたので手に取っちゃいました。ドイツで伝えられていたほら話をミュンヒハウゼン男爵の語る物語としてまとめられた世界的に有名な物語ですね。
 男爵は話が上手なだけじゃなく洒落も大好き。
「さすが料理人! コックだけあって、ククはうまいな。だが、どうせ九九、八十一までしかいえんのだろう。」(p79より)
 とか、しょーもないことを言っていたかと思うと、含蓄のあることもおっしゃってくださいます。

「そもそも女性に服従させようなどという了見がまちがっている。女性に服従させるのではなく、いかに女性に奉仕するかが、男の人生の醍醐味なのだ!」(p135より)
 きゃああ(≧◇≦) 男爵すてき。惚れてまうやろー。男爵はジェントルマンなのでありました。


『金髪の髪のお姫さま チェコの昔話集』カレル・ヤロミール・エルベン文 アルトゥシ・シャイネル絵 木村有子訳(岩波書店)

 実はちょっとマイナーなお国の昔話を読むのにハマってます。各国共通の話型がみられて面白いです。バルカンの昔話に日本の羽衣伝説そっくりなお話があったり、スロバキアの民話に一寸法師そっくりなお話があったりするのはちょっと驚きです。
 話を戻して。原書はアール・ヌーヴォーの時代のものらしく、この『金髪の髪のお姫さま』はとにかく挿絵が美しいのです! なんと、本文挿絵もフルカラーという豪華さ。衣装の細部、道具類の細部にまで優雅な模様が描かれています。ロイヤルな人物たちのドレスやマントのひだまで美しい。ベッドに臥せている王様の枕元にちょこんと王冠が置いてあったりするのが可愛い。ニワトリに担ぎ出されたイタチの王様が王冠をかぶってローブを羽織ってちゃんと王笏と宝珠を持ってたりするんです。コワカワイイ。
 それと人体の動きもよーく表現されてます。表情も味わいがあって。洞窟の中の何十羽もいるフクロウの表情がみんな違っててかわいい~。
「火の鳥とキツネのリシカ」というお話(金のりんご型のお話です)では、王子に選ばれるのを待ってる三人のお姫さまが「だーれだ?」って感じで王子様の顔を覗き込んでるのが可愛くて可愛くて、ワタシだったら全員お持ち帰りしたーい!(一番ダメな選択) キツネのリシカがふさふさのしっぽを振ってキツネ道を出したり消したりする描写も可愛い。もふもふに目覚めそうになりました。いや、リシカって雛鳥を人質にして親ガラスに命の水と死の水を取ってこさせたりとかなりダークなんですが。それというのも王子様が兄王子たちに殺されて細かく切り刻まれちゃったからで。ひょえ~~ですね。
 文章も素敵でお話も面白い。超おすすめの一冊です。噂では、2012年の刊行だというのにもう廃刊になってるらしいですが……。悲しいですね。


 以下は個人的メモです。
『ホメロスの世界』藤縄謙三(魁星出版)
『ギリシア神話1 イーリアス物語』高橋睦郎著 原田維夫絵(三省堂)
『ギリシア神話2 オデュッセイア物語』高橋睦郎著 原田維夫絵(三省堂)

9件のコメント

  •  物語の共通点って、不思議ですよね。人間の考えることは一緒? 物語は噂のように口伝えで何万キロも広まっていく? 集合無意識? はたまた、語り部がその国に生まれ変わったのか……。

     ちなみに僕は、単なる偶然とは考えたくない派です。

     その方が、ロマンがあるやろ~。
  •  どうしてでしょうねえ? きれいな天女が水浴びしてたら衣を隠したり、巨大な敵を倒そうと思ったら内側から攻撃しようってなるのが当然なのか。説話の大本って、中国やインドの場合が多いですから、そこから東西に向かって分布するのはあり得ることなのか。でも、東西で違いが出ることが多いのに(ドラゴンなんかはっきりと西では悪、東では聖、ですもんね)あんまりそっくりだとびっくりするというか。

     そうか、ロマンか~~。
  • ユングの原型理論ですね。

    人間の体に人種や性別を超えた共通の器官や働きがあるように、人の内面にも文化を超えた共通項がある。
    そこから産み出される物語が似通うのも当然である、みたいな感じです。

    神話なんかは顕著ですよ。
    日本神話とギリシャ神話とか、北欧神話と漢民族の神話の共通点とか、調べると面白いです。
  •  ギリシャ神話と日本神話は似てますよね~。ペルセウスアンドロメダ型とか冥界訪問とかテセウスと大国主とか。でもそうはいっても風土の違いというか、からっとしてるのと(地中海気候?)じめっとしてる(温暖湿潤?)感覚の違いみたいのは感じます。

     神話の共通点て、大地母神が男神に征服されちゃうのもそうなのですよね。女媧は伏羲の風下に置かれちゃうし、ティアマトはマルドゥークに敗れちゃう。ヘラもゼウスの配偶者にさせられて。

     イザナミイザナキも、国生みのとき、イザナミの方から誘ったら失敗して、イザナキから柱をまわったら成功とか、そのあと喧嘩別れしてイザナミが黄泉大神になるとか、女神が男神に追いやられたって形ですよね。
     それでも、最高神は女神(アマテラス)なんですよね。日本の場合。この違いは何だろうって思っちゃいます。同じ最高神=太陽神でもエジプトはラーですもんね。
     他にも、最高神が女神様の神話ってあるのかな???
  •  日ユ同祖論ってありますよね。
     紀元前に国を追われたユダヤ人が日本に到達し、古代日本の礎に大きな貢献をしたって話です。あれがもし本当だとしたら、ギリシア神話にある冥界からの脱出とかの共通性もわかる気がするんです。ユダヤ人でも、ギリシア神話を知っていた可能性はある。多神教の日本人のためにその説話を伝えた……という可能性です。

     また、大地母神が男神に征服されちゃう件について。
     小さな集落がまとまり、国家を統治するようになると、古代社会では神を権力者と同一視する必要があったと思うのです。
     そのために自然発生的である女性の生命力を根源とする信仰を、当時の権力者である男性に変える必要があった。だから男神に征服されちゃう。

     日本の天照には、逆説の日本史でも語られた仮説があります。

     卑弥呼=日巫女=天照。
     僕はこの説をとります。大和朝廷につながる実際の権力者が女性であったとすれば、最高神が女性であっても不思議はありません。
  •  聞いたことあります。可能性、ですね。集合的無意識にしろサルのイモ洗いにしろ、意識も行動原理もスピリチュアルなもので繋がってるのかもです。

     どうして権力が男性に固定されたか、なのですよね。狩猟生活をしているときには社会は家を守る母系で固められてた。農耕に移って定住生活になって家父長制にシフトしたわけですよね。それって土地を広げ守るために戦争をするようになったからかなあって思うのです。

     邪馬台国=大和朝廷ですか。卑弥呼=アマテラスとまでは思わないですけど。ワタシは崇神天皇の巻向王朝が征服王朝(新王朝)だったらおもしろいなーと思ってます。巻向王朝以前の大和族(邪馬台国?)のコミュニティゴッドがアマテラスで、アマテラスを巫女と一緒に伊勢に追いやったのが三輪の大物主。そうすると、大物主は出雲系の神さまだっていわれてるから、これも出雲系と高天原系(大和系)の戦いになるのか~? とか。この場合、邪馬台国の立ち位置まで考えが及ばなくなるので、ワタシは邪馬台国論争って苦手です(-_-;)
  • 『乙女ゲームの攻略対象キャラのポジションに転生しました。って、アタシ女の子なんだけど⁉』に星をくださってありがとうございます。

    この話は自分と弟の二人で考えたもので、乙女ゲームと言う題材の難しさもあって、構想から完成まで一年以上かかりました。
    その分話自体もとても長くなりましたが、最後まで読んでもらえて嬉しいです。



    神話や物語の共通点で言えば、自分は大洪水を思い出します。もっとも有名なノアの箱舟以外にも、メソポタミア神話やインド神話など、文明をリセットさせるくらいの大洪水の話が世界各地に存在しています。これだけあると、実際に昔似たような何かが起こったのではと妄想してしまいます。
  •  よく意味の分からないジャンルだったので、読ませてもらって良かったです。ただきゃっきゃうふふなわけじゃなくて主人公の成長があるところは、無月さん方ならではなのかな。
     空太については、私はコルダでも清水くんが好きなので(*ノωノ) しっかりした年下が好きみたいです。


     確かに~。洪水伝説は世界各地にありますね。地球規模の大洪水の記憶が基になっているのか。そこに、人々の行いが悪くて神様を怒らせた、正しい人が生き残るっていう寓話に仕立て上げられたところが恣意的というか。
     伝説や昔話って面白いですね。やっぱり物語の源流なので、こういうものに触れてきた人はお話作りが上手なのだと思います。
  • 奈月沙耶さま、こんにちは。
    この度は、拙作「コメディエンヌ」に、応援、お星様、そして素敵なレビューをありがとうございました。
    この冬、予防接種受けたにも関わらず、見事にインフルに罹り、めっちゃ辛かったという私の思いの丈をぶつけてみました!

    評価くださり有難うございました。

    綿貫まりぶ。
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