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読書メモ64

『平安後宮の洋食シェフ』遠藤 遼 (双葉文庫)2巻まで

藤原道長時代にタイムスリップ?したシェフヒロインが平安時代の食材を駆使して洋食を作り出すグルメエンタメ。陰謀とかまったくなく気軽なお話でザ・ライト文芸。そうそう、ライト文芸ってこういうのでいいんだよ☆って感がものすごいです。そーだよなー、こういうのがおもしろいもんな、うんうん。

とはいえ、密かにネタが盛りだくさん。道長がこっそり生卵を食べちゃって食中毒で寝込むくだりとか、「小右記」に記録があるアレですか!? みたいな。にやりとなりました。

晴明を始め有名どころな人物が目白押しだけど総じてキャラは薄く、ヒロインのサポート役の中務が存在感抜群なところに逆に好感が持てました。ライト文芸だもの☆



『晴明の事件帖 』遠藤 遼(ハルキ文庫 )4巻

↑の『平安後宮の洋食シェフ』と同じ作者さんとは思わず続けて読み始めて、あれ……ってなりました。ライト文芸と一般エンタメとで文体が全然違うのはすごいと最初は思ったけど、こちらはあまりに説明が多過ぎました。歴史ものの難しいところですね。
なにより残念なのは何番煎じなのさ……感がすさまじいこと。晴明で伝奇にするならよっっっっぽど新しい切り口じゃないと。実資がワトソン役っていってもキャラ被ってるし……なんて4巻まで読んだくせに辛口な読後感でした。



『源氏物語男君と女君の接近―寝殿造の光と闇』安原盛彦(河北新報社)

建築学に基づく寝殿造りの構造と、そこから推察される光と闇について。
寝殿造って現存する建物がないのかって目からウロコで、その後の書院造と比較しての図面や解説が多くて分かりやすかったです。
私がよく観る華流・韓流時代ドラマの家屋は、なるほど、棟と棟との移動は土足でしなくちゃいけなくて(日本でも奈良時代は同じ)、対して寝殿造は徹底して屋内を移動できるようになってる。なるほどー。
垣間見したい男と顔を見せたくない女の光をめぐる攻防って物語の着眼も面白かったです。うーむ、なるほど……



『唐シルクロード十話』スーザン ウィットフィールド(白水社)

安史の乱の前後の時代のシルクロードの十の場所、十の人々のお話。歴史ドキュメントの再現ドラマな感じで面白かったです。シルクロードって実に複雑な場所で、もう少し詳しくなってからまた読みたいと思いました。

邦訳なので元々の英語を使っているのだろうカタカナ語がまた面白くて斬新な感じがしました。各話にちょこちょこ出てくる「ダブルシックス」ってゲームがあって、登場人物たちがよくこれに興じるんです。賭け事ってことで、私はブラックジャックみたいなカードゲームを連想しちゃってて、かなーり後になってから「双六のことか!」って気が付きまして……や、とくに解説がないもんで。そのままだったのに……

って、和語をカタカナ語で読む体験をもっとしたくて、逆輸入のウェイリー版『源氏物語』をちまちま読み始めました。
めっちゃ面白いです。
シャイニング・プリンスにエンペラー・キリツボ、レディ・コキデン、プリンス・ヒョウブキョウ。大納言はパレスの顧問官で、右代弁は右の官房長官。え、わかりやすい……って衝撃です。
源氏物語に挫折したことある人におススメかもです。



『腐れ梅』澤田 瞳子(集英社)

こ・れ!!
久々にヒットでした!! 面白かった!!!
巧みな構成が見事なピカレスク時代劇。庶民がパワフルな時代といえば中世って刷り込みがあるので、平安前期って時代設定に最初はしっくりこなかったけどそんなの気にならなくなりました。
道真の梅をこんなふうにつなげるとは……
個人的に、美貌と大胆さが武器のヒロインよりも、醜女で賢い阿鳥を応援したい気持ちがあって、阿鳥が珍しい表情をした序盤のシーンが気になってただけに、そういうことかと分かってきたときにはゾクゾクきました。すごい。
そして何より「ほとがかゆい」がこれほど印象深い一文になるとは。
面白かったです。



『泣くな道真 大宰府の詩』
『吼えろ道真 大宰府の詩 』澤田 瞳子(集英社文庫)

↑と同じ作者さんですが、『腐れ梅』と比べるとこちらは至って平和な感じが。
荒んだ道真おじいちゃんの面倒を見る大宰府の役人さんたちがとても大変そう(笑)
個人的に何がツボって、道真と小野篁の子孫たちの交流がドリーム感があって楽しいです。同じ学者出身の公卿で、かたや天神様、かたや冥府の裁判官なふたりですもん。
道真がコミカルなキャラになっちゃってますが、「応天の門」の菅三が紆余曲折を経ておじいちゃんになったらこんなかもって思えてこれまた楽しいです。



『平安妖異伝』
『道長の冒険  平安妖異伝』平岩 弓枝(新潮社)

この作家さんは江戸時代のイメージが強くて、こんなものを書かれていたのかと見つけた時にはびっくりでした。
坊ちゃん坊ちゃんしている道長とミステリアスなヒーローとのコンビが良いし、ほろりとくるお話が多くて読後感が良いです。

続編は真比呂に置いてけぼりにされた道長が忠義ものな従者を得て異界を旅する冒険ファンタジーでこれまたびっくり。エキゾチックな雰囲気ただよう神仏の世界で、伝奇感たっぷりです。
エンタメのツボをおさえたこなれた筆使いはさすがで、こんな平安ものもありかと面白かったー。こういう勢いで書いちゃう感じの、ひたすら楽しめて良いです(笑)



『平安の気象予報士 紫式部-『源氏物語』に隠された天気の科学』 石井 和子(講談
社+α新書)

気象から読み解く源氏物語と平安時代。とても切り口がおもしろい。
記録から当時の気温や天候を推察する試みからはじまり、王朝物語のあのシーン、このシーンの気象や服装に注目。
演出的な部分で、お天気の描写って大事だよねってしみじみ感じ入りました。
にしても、気象予報も古典もどっちも好きじゃないとここまで分析できないよなって、こういうクロスオーバー的な研究ってほんと面白いです。



『上野千鶴子の選憲論 』上野 千鶴子(集英社新書)

公演録がもとになっているので、着眼点の面白さとスパスパッな語り口とでわかりやすく面白く憲法の問題について読めました。
同意できる点とそうでない点があるのは当たり前のことで、そういうことを私たちひとりひとりが議論できるようになれば「強者になろうとがんばるよりも、弱者になっても安心して生きられる社会」になるって実感はすごくすごくあります。
こういう楽しい語り口のものに触れて、まずは政治への間口が広がればって思います。



『両手にトカレフ』ブレイディみかこ(ポプラ社)

「あなたはもう何もしなくていいの。見ないふりをせずに、言い訳をせずに、何かしなくてはいけないのは大人たちの方だから」
ゾーイのこの言葉につきますね……イーヴィが背中を押してくれたからで、つまりはゾーイの子育てが間違ってなかったってことなのかな……とぶわっときました。

ミアの現実と、彼女が読むフミコの物語がシンクロするクライマックスは圧巻でした。
ネタバレになりますが↓↓↓






クリスマスツリーの下で眠る姉弟にほんとうにほんとうにホッとしました。ハラハラどきどきだったよ、ヨカッタよー。






えーと、で、添付画像は夏に読んだもぶどれ3巻だったりします。

今回の口絵はヨウとの絡みで、ぎゃーふざけんなカス! はなれろ~と吹き出しのリリアと同じ表情になったであろうワタシ……ですが、本文の挿絵が尊すぎで鼻がむずむずなりました……もーほんと反則……尊い……

じきに発売される4巻はおにいさまメインっぽい?? 楽しみです! 表紙と口絵はおにいさまがいいなー、カラーで見たいなー

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