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読書メモ63

とっても久々な読書メモ。溜まってた分大放出です。


『彼女の体とその他の断片』カルメン・マリア・マチャド(エトセトラブックス)

松田青子の訳がお目当てで読みました。8篇の短編集。
わりと面白く読めたお話からさっぱりわけのわからないものまで。
ムズカシイ。詩的な文章でぐいぐい読めるのだけどムズカシイ。けどなんとなくワカル気もする……っていう、ブンガクってこうよねーって感じられました。良い意味で。


『少女マンガのブサイク女子考』トミヤマユキコ(左右社)

『薔薇のために』や『圏外プリンセス』なんて好きだったマンガが取りあげられていたので手に取ったのだけど面白かったですー。
そのまんまブサイクなヒロインから、コンプレックスを抱えたヒロインまで。
ブサイクを取りあげた名作の数々に少女マンガの可能性と奥行きを再確認してみたり。

美しさってなんだろう、なんで美しくあらねばならないんだろうって、美容関係の広告を見て考えちゃったり。そこのところの購買意欲は衰えない、だから食い物にされたり、ターゲットが男性へと広がってたり……ってなると、ブサイクなヒーローの考察も読んでみたいです。


『逃亡くそたわけ』
『まっとうな人生』絲山 秋子(河出書房新社)

これ、ワタシったら続編の『まっとうな人生』を先に読んでしまい。前作があることを知って『逃亡くそたわけ』を読んだら、まっとうに家庭人になっていた花ちゃんとなごやんのハチャメチャな逃亡劇にびっくり。畑泥棒とか食い逃げとか普通に軽犯罪を重ねちゃってる黒歴史。
順番通りに読んでいたなら、あのハチャメチャな花ちゃんが主婦になって頑張っているってほろっときたんだろうなと想像すると、読む順番によって感想ってかわりますね、やっぱり。
『まっとうな人生』はコロナ禍が背景で、あの混沌とした日々を思い出しつつ、なごやんの言い分は理解できるけれど自分勝手だよねって感じたものですが、『逃亡くそたわけ』を読んだら花ちゃんのがよっぽどメチャクチャで(笑)
かたくなに標準語にこだわるなごやんの思わず出た「いかんがあ」はきゅんときました。


『妖怪の子預かります』廣嶋 玲子(東京創元社)

児童版全10巻を読破しましたよー。江戸時代な時代背景で花魁なんかも登場。男女のドロドロも描かれていてびっくり。
そういえば、銭天堂の作者インタビューでも恋愛のエピソードが好評って見かけましたっけ。
かつ萌えポイント盛りだくさんで、かつ意表を突く結末で、わーん、千にい!って泣きましたよ、ワタシ。
なんと続編シリーズがあるらしく。これだけキレイに終わっているのに……なんてひねくれたことを思いつつ気になるのでそのうち続編も読みたいです。


『ヨーロッパのかわいい刺繍』
『アジアのかわいい刺繍』
『世界のかわいい刺繍』(誠文堂新光社)

夏前くらいに、なんでかやたらと刺繍のお洋服が気になり始めて。素敵だなぁ、欲しいなぁ、高いなぁ、なんて物色しているうちに、トッカやシビラみたいなエレガントな総刺繍はムリでも、ワンポイントなら自分でできそうだよねって考え始め。

手芸本を漁ってみたけどピンとくる図案がなく、工芸の棚を探してみたらステキなものがたくさんありましたー。
やっぱり豊富なカラー写真で見る現地の手仕事は素敵です。
こちらの3冊はコラムもおもしろくて、特にキーワードになっているのは〈フェアトレード〉です。価値のあるものには正当な対価を。それが当たり前になればよいのですが。


『中央アジア・遊牧民の手仕事 カザフ刺繍 伝統の文様と作り方』廣田 千恵子,カブディル アイナグル(誠文堂新光社)

こちら! こちらはまさに『乙嫁語り』の世界です。ざっくりとカザフ遊牧民の歴史や現況、文化も解説してくれ、豪華な刺繍のタペストリーの写真が満載(子羊を抱っこした少年の写真にもほっこりしました)
おまけに、伝統的なかぎ針刺繍の手順を写真入りで細かく解説、図案まで豊富に掲載してくれている神本です!

というわけでさっそく実技体験。手持ちのいちばん大きな刺繍枠と余り布、レース針とダイソーのレース糸とでかぎ針刺繍をやってみました。
布地にぷすぷすかぎ針を突きさす手ごたえが楽しく、鎖編みを編みつけていく感覚で意外と簡単……と思ったのは最初だけで。直線は簡単だけど角やカーブを曲がるのが難しいです!! 何度やっても上手くできない(ザ・不器用)

で、早々に諦めて(軟弱者)、でもステキな図案は捨て置けず、手持ちのブラウスに普通のチェーンステッチで刺すという邪道に走ったわけですが。おかげさまでなかなかステキな一着になりましたー。この夏ヘビロテしました(満足)

とはいえ、きちんとかぎ針刺繍できるようになりたいです。一生モノの壁掛けとか作ってみたいですね。


『現代思想』2021年9月号 特集=<恋愛>の現在 -変わりゆく親密さのかたち-
永田夏来,高橋幸,石井ゆかり,清田隆之,菊地夏野,深海菊絵,谷本奈穂(青土社)

社会学用語や先行研究もりだくさんでムズカシイ。けど、面白かったです。

バブル期の消費社会を背景とした恋愛至上主義。
ゲイ男性同士のルックス至上主義。レズビアン女性同士の出会いの難しさ。諸規範による〈恋愛〉への疎外。
女性ファッション誌から見る恋愛文化。
フィクションで繰り返されるロマンティックラブ。
恋愛におけるゴースティングという現象。
韓国社会の家父長制ボイコットとしての非恋愛。
十年前の恋愛相談は、恋をしている、恋を失った苦しさが多かったのに、現代では恋ができない悩みが多い。
日本のポップソングの恋愛表象とジェンダー問題。
映像メディアにおける同性愛表象でのゲイとレズビアンの扱いの違い。
恋愛リアリティーショーの変化。
ラブコメマンガの変遷。
などなど。

日々の生活の中でうっすら感じながらも流してしまっていることを、突っ込んで考えていく社会学者さんはつくづくスゴイ。本当はわたしたちひとりひとりが問題視できるようになるのが理想なのでしょうけど。


『新 13歳のハローワーク』村上龍(幻冬舎)

自閉学級に通う中学2年生の息子の進路について、早めに準備をってことで、民間会社が開催している保護者向けの学習会に参加したり、高校の資料を取り寄せたり、就労支援について調べたりと情報を集めています。
「中学までは義務教育だけど高校からはそうじゃない」ってコトバを各所で耳にします。なんで進路がとっても不安。就職まで見越して考えましょうって言われます。

……そうはいっても、世の中の職業は様々で、自分に何が適しているのかなんてやってみなくちゃ分からないっていうのが実際なのに、そもそも働くとは……なんてぐるぐるしちゃって。
図書館で職業図鑑なんて開いてしまったり。で、職業図鑑の棚に並んでいたこちら。
当時ものすごく話題になったこちらを今頃手に取ってみました。

図鑑と読み物のあいだみたいで。貸出できないので図書館に行くたびにチマチマ読み進めて完読しました。面白かったです。
この分野は将来こうなるって専門家のコラムも豊富で、グーグルの中の人のインタビューや、村上龍と坂本龍一の対談なんてとくに。
あと「小説家」の項目が身も蓋もなく、それを言ったらさぁなんて失笑すら浮かびませんでした(真顔) でもでも、おかげでヘンな焦りみたいのはなくなりました。そらそうだ、小説はいつだって書ける。


『翼の帰る処』妹尾 ゆふ子(幻冬舎コミックス)

本篇全10冊。長かった……です。どこまでも広がっていく風呂敷にどーすんだこれ??と残り頁が心配になり、毎回だいたい主人公がぶっ倒れている間に解決していることにボーゼン。
ここまで主人公視点にこだわるスタンスに感服しました。これ、イマドキの書き方だったら絶対に視点変更してるよ、すごいよ、潔いよ。
それだけ、主人公のモノローグは面白いですし、まわりから体調の心配ばかりされてるのも面白い。
バケモノ級な人物揃いだからできる離れ業です。主人公の能力は規格外だろうけど、それとは別にオソロシイ皇族の方々……。
ひときわ恐れらてれるはずの皇妹には拍子抜けでしたけどー。自分が皇帝になるくらいのことしてほしかったですよー。思わせぶりがすぎますよ、もうー。本命は皇女様ですけどね、もちろん。

思わせぶりといえば、読者の度肝を抜いた主人公と皇女様のあのシーン。いや、ワタシは主人公の行動よりも動機になんじゃそれってなりました。えー違うでしょ、そーいうことは真心からでしょー。ふざけんなコラぁ。

可愛らしいのにオトコマエな皇女様が尊すぎてヒーローがかすむのが切ない(笑)
総じて、女性キャラが凛々しく美しく、男性キャラが有能なのに脇が甘い、が、じじい無双、と私好みな相関図で面白かったです。
発進シークエンス好きなので、鳥の出立シーンも滾りました。


まだまだ溜まってるので次回に続きます。

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