いつも応援して下さる皆様、こんばんは、白猫なおです。(=^・^=)
二月ですねー……
本当は新年にご挨拶がしたかったのですが、気が付けばもう二月……
今年も宜しくお願い致します。m(__)m
さて、今回のSSは子育て奮闘記の物です。
ララも間もなく学園入学。
そこで出会うであろう、二人の王子様の紹介のようなお話です。
リッカルドの方はレオナルドと共に一度SSで出していますが、エドアルドは初登場です。二人共かなーり前から作り上げていたキャラです。勿論ディックやエリー先生なんかよりずっと前です。(笑)やっと登場……いえ、まだ本編には出て居ない不憫なキャラですが、どうぞよろしくお願い致します。m(__)m
SS投稿まとめたものは番外編で14日に投稿予定です。
番外編も久しぶりです。すみませーん(;'∀')
【二人の王子SS】
レチェンテ国の王、アレッサンドロ・レチェンテは、今頭を抱えていた。
それは末息子の傍付きと、アレッサンドロの初孫であり、次期王太子予定の傍付きたちから、ある報告を受けたからだった。
まず、アレッサンドロの息子であり末王子のリッカルドは、魔石バイク隊になった兄のレオナルドに憧れており、今頃になって「やっぱりユルデンブルク騎士学校に行きたい!」などと我儘を言い出した。
試験はとっくに終わっており、もし騎士学校へと入学するとなれば、次次年度となる。
王子に留年などさせられないと、レオナルドに頼みこみ、どうにかリッカルドを説得してもらったが、心から納得はしていないようで、事あるごとに傍付き達にあたっているようだった。
末息子のリッカルドは元々元気のある王子なのだが、最近はとにかく我儘が酷く、機嫌が悪い。
その原因はアレッサンドロには分かっていた。
そう、リッカルドの大好きな兄であるレオナルドが、休みの度にスター商会へと足を運んでいるからだ。
(リッカルドはララちゃんと同級生……ララちゃんがスター商会の会頭だと知って学園で意地悪をしないと良いが……)
そう、ララは見た目だけはか弱い女の子に見える。
なのでリッカルドは、ここぞとばかりにララにレオナルドの事で文句を言いそうだった。
(そんな事をしたならば……ララちゃんはともかく、アダルヘルム様がどう思うか……)
愚かな王子をとにかく嫌うアダルヘルム。
リッカルドの我儘と、そう育て上げてしまったこの国を、”要らぬ物” と思うかもしれない。
アダルヘルムの冷たい笑顔を思い出し、アレッサンドロは恐怖のあまり痛む頭を押さえながら、傍付き達に「とにかくリッカルドには良く言い聞かせるように!」と指示を出した。
そして孫王子のエドアルド・レチェンテ。
こちらも嬉しいやら悲しいやら……残念ながらララと同い年で、ユルデンブルク魔法学校への入学が決まっている。
次期王太子となるエドアドルは、リッカルドと正反対の性格で、とにかく大人しい。
たまに目を開けたまま寝ているのではないか? と、アレッサンドロが本気で心配になるほど、何も喋らず、あまり動きもしない。
未来の王となるエドアルド。
出来ればこの国の平和の為、そして発展の為にも、ディープウッズ家の姫であるララと仲良くなってくれたならば……
とアレッサンドロにはそんな欲が出てしまうが、アダルヘルムの事を思いだすと、ララと出会わなくても良いのかなぁーなんて思ったりもしていた。
「あー、お前達、エドアドルは今日は何か喋ったか?」
「いいえ、返事以外は何も……」
「そうか……今は何をしている?」
「はい、部屋で静かに読書をしていらっしゃいます」
「そうか……読書か……」
大人しいエドアドルと、暴れん坊のリッカルド、そんな同い年の二人の王子を足して2で割れたら……きっと素晴らしい王子が出来上がる事だろう。
アレッサンドロはそんな出来もしない事をついつい想像しては、虚しくため息をつく。
ララと同級生。
それがなければ、アレッサンドロもここまで両王子達の事で悩まなかったのかもしれない。
とにかくアダルヘルムの……そしてディープウッズ家の怒りを買わないように。
そう思う度、胃がキリキリするアレッサンドロだった。
「エドアドル様、気分転換に少しお庭をお散歩いたしませんか?」
エドアドルは傍付き達にそう声を掛けられると、首を横に振った。
エドアドルは自分の傍付き達が、祖父であるお爺様の命令を受けて、自分に声を掛けているのは分かっていた。
エドアドルは賢い、自分が動けば回りも動かなければならない事をよく分かっていた。
庭へ行こうものなら、何人もの騎士や使用人が先回りし、危険がないか調べなければならない。
それはエドアドルが次期王太子であり、いずれこの国の王になるからだ。
同じ王子でも、自分の叔父にあたるレオナルドやリッカルドはもっと気軽だ。
自分である程度自由に動けるし、やりたい事があれば、王子としての許容範囲内で許されている。
けれど……
エドアドルはそうはいかない。
学校決めも、レオナルドとリッカルドには選択肢があった。
けれどエドアドルは、初めからユルデンブルク魔法学校へ行く事が決まっていた。
自分には自由がない。
好きなものを好きとは言えない。
それにもし、エドアドルが本当に好きな物の話をすれば、皆顔を歪めることだろう。
だからエドアドルは余り喋らず、あまり動かない。
「どうせ僕の進む道は決まっているんだ……」
王になる。
皆が望むように勉強し、無難な王にいずれならなければいけない。
そんな自分の未来が分かるエドアドルは、幼いながらも自分の気持ちを抑える事にたけていた。
だが……
そんなエドアドルの優しい気遣いは、いつしか周りが心配するほどの、無気力に見える王子の出来上がりとなってしまっていたのだった。
「はー、学校へ行ったってどうせ僕には友達なんて出来ないだろうなー……」
そう、王子であるだけでも友人を作るのは難しい。
叔父たちや叔母たちを見ていれば分かる。
だからいずれ王となるエドアドルは、尚更何でも話せる心の友など学校へ行っても出来るはずがないと……ここでもそう諦めていた。
「エド! 邪魔するぞ!」
「リッカルド……叔父上?」
ぼんやりと本を眺めていたエドアドルの部屋に、同い年の叔父であるリッカルドが供も付けず飛び込んできた。
多分傍付き達と隠れん坊でもしているのだろう。
普段から良くある事だ。
だが、今日はちょっと違った。
リッカルドは本を読んでいるエドアドルの手を引くと、一緒にクローゼットへと隠れさせたのだ。
エドアドルの傍付き達が慌てだしたが、エドアドルが「大丈夫」と手を挙げて皆を制せば、ピタリと動きを止めた。
彼らもリッカルドの隠れん坊にはなれている。
今日もその延長だと思ったようだった。
「おい、エドアドル、スター商会ってのを知っているか?」
リッカルドは二人きりのクローゼットの中で、小さな声でエドアドルそんなことを聞いてきた。
スター商会。
このレチェンテ国でその名を知らぬ者は今やいない事だろう。
街など一度も行ったことのないエドアドルでさえ、その名も、そしてスター商会の商品も、よく知っていた。
そんなエドアドルの様子を見て、リッカルドは話を続けた。
「いいか、エドアドル、今から話すことは絶対に内緒だぞ……」
エドアドルは素直に「うん」と頷く。
するとリッカルドは誰もいないクローゼットの中を確認し、益々小さな声で話し出した。
「実はな……スター商会の会頭が俺たちと同級生らしいんだ」
「えっ?!」
エドアドルは久しぶりに大きな声を出し、それに自分でも驚き、慌てて口を押えた。
スター商会の会頭が自分たちと同級生?
それは……同い年と言う事?
情報をくれたリッカルドでさえ、その情報に驚いているようだった。
「ユルデンブルク魔法学校の入学式の日、俺はスター商会の会頭を探しだす!」
「えっ? でも……」
「俺は、スター商会の会頭に兄上を呼びつけるなって言ってやるつもりだ! エドアドル、どうする? お前もスター商会の会頭に会って見るか?」
エドアドルの答えは 「勿論会ってみたい!」 だった。
スター商会と言えば、おもちゃ屋さんとか、レストランとか、凄く楽しそうな噂を耳にする。
使用人達がウキウキした様子で話すスター商会の噂を聞く度に、エドアドルはずっと楽しそうだと思っていた。
それにスター商会は、お祖母様やお母様、それに叔母様達も良く行っている場所。
エドアドルはスター商会の名を聞いて、「何かしてみたい!」という、諦めかけていた自分の意志を取り戻していた。
「リッカルド叔父上、私もスター商会の会頭に会ってみたいです!」
「良し! エドアドル、スター商会の会頭に一緒に文句言ってやろうぜー!」
二人の王子はこうして二人だけの秘密を作った。
レチェンテ国の王であるアレッサンドロが知らぬ秘密。
入学式でララに会い、二人がどうするのか。
そして文句を言い、どうなるのか……
こればかりはまだ、誰にも分からないのであった。