皆さんこんにちは、お久しぶり。カイエです。
少し前に、拙作「庭にはいつも、ちよろずの落ち葉」にて「忘れられない味」という話を書きました。
内容はといえば、惜しまれながら閉店した老舗のたこ焼き屋さんの味を追い求めてレシピを探求するものの、奥さんのメディカルチェックに引っかかって断念した、という誰に需要があるのかわからんようなつまらない話です(いわゆる「自分のとっては大切な話」というやつです)。
それからずっとたこ焼きを封印してきたのですが、先日「ちよろず」を読んだ奥さんが「たこ焼きが駄目なんじゃなくて、たこ焼き祭りが駄目なだけなんだよ」「普通の量なら、たこ焼きを食べてもいいんだよ」と教えてくれました。
あと、その話を書いている途中にふと「試してないことがある」事にも気づきました。
それも2つも。
なんでも言葉としてアウトプットしておくんもんですねぇ……。
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試していなかったことというのは、タコの選別、そしてだしの素です。
タコがアフリカ産だというのは親父さんから聞いていました。
アフリカ産というのはおそらくモーリタニア産でしょう。
そこらで簡単に手に入るので、もちろん「狂気の探求」時にもモーリタニア産を使っていました。
問題は、お店だと冷凍のタコを使っている可能性が高いってことです。
もしかしてこれか? と思い立ち、モーリタニア産のタコを買ってきて冷凍庫に放り込みました。
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もう一つ試していなかったのは、だしの素のメーカーです。
うちでは普段、もちろんちゃんと毎回出汁を取っている……なんてことはなく、粉末だしの素上等で生活しているのですが、使っているのは味の素さんの「ほんだし」です。
でも、考えてみれば「昔からあるだしの素」といえば「シマヤだしの素」です。
「ほんだし」が1970年に発売なのに対し、「シマヤだしの素」発売が1964年発売なので、言うほど差はありませんが、「ほんだし」のほうがやや高価な傾向にあるようです。
値上げもせずにずっと安価で美味しいたこ焼きを提供し続けてくれた老舗なら、「シマヤ」を使っている可能性はまぁまぁ高いでしょう。
というわけで、ドクターストップ後はじめて、自宅でたこ焼きを焼きました。
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「う、お、お、おおおおお」
ぼくが声を上げると、家族がみんな笑いました。
「あの味だ。あの店の味。ヤバい、あの風味、そうか、考えてみれば『ほんだし』なわけないもんな。いや『シマヤ』かどうかは確定じゃないけれど、少なくとも近い風味調味料を使ってるのは間違いなさそう、てか似てる、あ、どうしよう、泣きそう。タコも一度冷凍しただけだと言うほど劣化してない、でもタコの味が濃く感じる。ケーキとかで果物の味を濃縮させるために一度冷凍することがあるけど、アレと同じ原理でタコの味が濃くなるのか。タコだけでも、だしの素を変えるだけでもそんなに味は近づかないけど、合せ技ですごく近い風味になった! それに経木の船に乗せるとますます近い風味になる!ちょっとゆず七味かけていい? あ、似てる、あ、ああ、あ、あのときの風味だぁあぁ……惜しむらくはソースが違う、やっぱり伊丹市まで同じ地ソース買いに行くしか無いのか……でも『オタフク』よりも『ハグルマ』のほうが近いな、でもできれば『ママソース』が欲しい、でも個人相手に売ってくれるかな、それに一升瓶で買っても使い切れな」
「ちょちょちょちょ」
「パパ、待って待って、落ち着いて」
かなり近い出来(近似値65%、自宅再現としては優秀)に興奮してると、家族にドン引かれました。
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というわけで、6月17日は「たこ焼き記念日」としたいと思います。
子々孫々までこの味を受け継いでもらえるように、しっかりレシピ集に残しておこうと思います。