• 異世界ファンタジー
  • ホラー

「井戸から出たまこと」 初期稿

 2016年7月17日に書いた「言ってはいけない」を修正して「井戸から出たまこと(https://kakuyomu.jp/works/16817330654652619359)」として投稿しました。

 当時はタイトルから考えて、出勤までの三十分間で書いて投稿するというとんでもない書き方をしていたのでタイトルと中身が違うということが良くありました……。
 今もわりとあるんですが、成長してると信じたいです。

ーーーーーーーー

 専門学校に通っていた時にあったことだ。
 俺は映像系のところに行ってたんだ。
 映画が好きで、そういう所に行ったんだけど、知識を習ったらクリエイター気取りになる奴ってどこにでもいた。
 俺と同じ科に「○○の映画って……」と言えば「ああ、それ面白くないよね。このカットとかこの一連のシーン、カメラワークが好きじゃなくってさ~」とまあこんな感じの会話をするような奴が一人。
 皆そいつとはその話題は避けてたんだ。好きなもの貶されたくないだろ?
 ある夏の日。
 そいつ以外で集まってテレビ見てたんだ。よくあるじゃん、心霊特集ってさ。
「なあー、あいつこういう奴見ても合成だとか言うのかなー?」
 誰かが言った。そしたら賛同するように、
「そうだ、みんなでこういうの作ってさあいつビビらせてやろうぜ!」
「いいね!」
「いくつか分かりやすい合成も入れておいてさー、一個だけ本物っぽいの入れたらだまされるんじゃない?」
 そんな流れで俺たちは心霊映像(仮)をつくることにした。


 みんなでテーマを決めることにした。
 ありきたりだけど「口にしてはいけない」。冒頭に「見たものを口にしてはいけない……」などのオープニングになるムービーを入れた。
 休みの日とか、授業外の時間とか俺たちが出来ることを全部やってその心霊映像(仮)は呪いのDVDとして奴に見せる時がやってきた。
 そいつには映像の批評をしてほしいって話した。いつも無理やり見てくるから、そう言った時は嬉々としていた。
 映像が流れると案の定、草生やしてた。
「ここ合成じゃんwww しかもすっげー下手wwww」
「何これ、お前らが作ったの?www」
 俺らはむかついたけど、最後まで黙ってそいつに見せたんだ。最後に改めて感想を聞くことにした。
 最後の方は目を凝らして見てたから自信があった。
「最後の井戸はどうやって作ったんだ? 3Dか、いやお前ら3Dそこまで得意じゃねぇもんな……? 実際に撮ったのか」
 俺たちの頭の中は「?」だった。
 井戸を上から映す。ただそれだけのシーンだ。3Dを使うまでもないし、そこは合成すらしていないカットだった。
「井戸? 普通に上から撮ってたけど?」
「そこじゃない。そこは一瞬だったろ? その後はずっと井戸を登るシーンだったはずだろ?」
 そんなシーンはないはずだ。
 誰も覚えがないのか、黙ったままだった。この映像を作ったときに監督をやった奴が「そんなカットは作ってない」と言いながら最後の方を再生しはじめた。
 しかし、井戸のシーンは一瞬しかなく残りは砂嵐だった。
 俺たちは「なんでだ!?」「確認したのに!?」。たった一人だけ。
「今度は女が写ってる……」
 そいつだけには何かが見えていたようだった。

 以来、心霊映像作りにはまりそれで小遣い稼ぎをする奴もいたけど、ほとんどがそういう映像はもう作らないって決めた。
 
 仕事なら作るけれどね。
 

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する