🔴「💞御茶ノ水物語」、
https://x.gd/LP41k💞雨の御茶ノ水。キース・ジャレットが響く講堂で出会った、犯罪心理学を追う少女と物理学を志す青年の、あまりに知的で不器用な恋のセッション。
💞第1章 森絵美
https://x.gd/TLxN6長いです。ご注意下さい。
チェロは、あまり爪が気にならない。長いとダメだが、ギターのように爪弾くわけじゃなく、ボーを操るのに邪魔にならなければいいのだ。だから、爪の長さはピアノの演奏に合わせてお手入れをする。
うん、できた。完璧。我ながら、細くて長い良い指だと思う。次は足の爪。ピアノのペダルを踏むことはあるけど、靴越しだもの。足の爪は演奏には関係ない。深爪しない程度に2~3ミリ残して、クリアのペディキュアを塗る。
足の爪を切っているところは、これは、彼氏には見せられないな。今は彼氏、いないけれど。立膝をして爪の周囲が綺麗に切れればいいが、どうしても、左右の縁がうまく切れない。開脚をしないとダメなのだ。
だいたい、足の爪を切る時は、着飾らないでしょ?Tシャツにパンティー姿。それで、ヨガのポーズよろしく、開脚をしたり、つま先を持ち上げたり、かなり際どい格好になる。
これ、彼氏に見せられます?私はダメ。今はフリーだけど、もし彼氏がいたとしても、足の爪を切る時は部屋を出ていってもらうだろう。
あれ?足の爪を切っている時に私の部屋にいるような彼氏って、かなり近しい存在かな?それなら、M字開脚のパンツ丸見えでも彼には見せてもいいのかな?……そんな空想をしている自分がおかしくて、ふふっと一人で笑ってしまった。
さあ、ペディキュアでも塗ろうかしらと考えていたら、電話がかかってきた。
「もしもし、森でございますが?」と受話器を肩に乗せながら応答すると、「絵美?奈々です。元気?何してるの?」と中高大学とずっと一緒の神宮寺奈々からだ。「足の爪のお手入れをしてるのよ」と答えた。
「ねえねえ、絵美、明日ね……」
「イヤよ。行かない。遠慮しておきます」
「絵美ぃ~、私、何も言ってない!」
「どうせ、奈々のことだから、男の子絡みでしょ?」
「……それはそうだけどさ、この前知り合った子がドライブに行こうっていうのよ。それで、彼の友達も連れてくるっていうから……」
「奈々、あなたと男の子の趣味が合わないのよ。ドライブに行って、あわよくば、というハンサムな男の子でしょう?私の土曜日をそんな子と時間を共にしたくない」
「そんな、肉食じゃないって、今度の子は……」
「ダメね。どうせ、肉食の奈々ちゃんだから、相手もそうなるのよ。私、そういうセックス主導のお付き合いってしません」
「ドライブだけだからさ。海を見てね……」
「イヤです。他をあたって下さい」
「絵美、あなた、今、フリーでしょ?いいじゃない?」
「ダメです。玲子にでも声をかけたら?私は行きません。玲子だったら、あなたと趣味が合うじゃない?」
「つれないなあ……明日は何か予定でもあるの?」
「明日はピアノの練習でもしようと思って」
「男の子よりもピアノなの?信じられない!」
「悪いわね。私は、男の子よりもピアノなのよ。今度、付き合うから」
「あなたの今度は十年後なんじゃないの?」
「そうかもしれない。さあ、玲子に電話しなさい。私はほっておいてね。でも、お誘い、ありがとう。男の子がらみでなければ、喜んで付き合うわ。じゃあね」
「まったく、もう……わかりました。玲子に電話するわよ。じゃあね~」 奈々はいい子なんだけど、ハンサムな子に弱くて、すぐ寝てしまう。そういうお付き合いは長続きしないわよ、という私の忠告は聞かないんだから。
私はセックスを人質にするのって、できない。もちろん、私はセックスが嫌いってわけじゃない。相手と通じあえるセックスならいいのだ。一人しか経験がないけれどね。
しかし、それがセックスが人質になるのなんてイヤなのだ。セックスをしてしまうと、大なり小なり相手に対する独占欲、所有欲、支配欲がムクムクと頭を持ち上げる。相手に依存してしまったり、執着してしまったりするようになる。セックスが介在してそういった感情が出てくるのがイヤ。でも、気持ちいいことは好き。
う~ん、これじゃあ、しばらく相手は現れないかな?待ち人来たらずなのかしらね?