「💋新奴隷商人 (ア・ヌンナック)」
第1話(2) 狂気の異種交配
紀元前10,765年、シリンダー型恒星間航行船ア・ヌンナックⅡ号は氷河期の終わりかけた地球に墜落した。https://kakuyomu.jp/works/2912051606012457260/episodes/2912051606061644179
《《生存か絶滅か》》
アスクレピオス♂は、ホログラムの全員を見渡し、厳しい現実を突きつけた。「我々は25隻の脱出船がこの惑星に散らばり、4,736名の生存者がいる。5年後には4,374名に減る。男女比はほぼ半々だ。健康者・軽症者3,764名と回復者486名の54%、《《2,268名が受胎可能な女性》》だ。人工培養装置は1,250台あるが、60%は老化した我々の肉体の修復に使わねばならない。新しいヒューマノイド形態の培養に使えるのは500台のみ。数が足りない。
我々の肉体は生殖可能だが、自然妊娠・出産の経験はない。軌道上の脱出船の観察報告によると、この惑星の原生人類のクロマニヨン人が各地に二万人生息している。ヒューマノイド形態で、調査してみないとわからないが、可能であれば、彼らとの混血が現実的な選択だ。しかし、倫理と生存の間で選択を迫られている。このままでは我々の種はここで終わる」
パンドラ♀がナイルからタブレットの薄暗い光で厳しい統計を投影した。「各培養装置は5年で新しい肉体を思春期まで成長させられるが、古い肉体から新しい肉体への意識転送は精密な作業だ。だが、自然出産では新たな意識が生まれる。幼児の脳には意識の萌芽があり、我々の意識を転送することは困難だ。自然生殖を選べば、知識の連続性は失われる。この惑星の原始人のクロマニヨン人のように、新世代に一から教育しなければならない」
シベリアのシシュフォス♂は苦々しい表情を浮かべ、ホログラム越しに嘲るように言った。「つまり、原始人に成り下がるのか?獣の如く子を産み、我々の本質を忘れるだと?そんな屈辱を受けてまで生き延びるくらいなら死を選ぶ!」かつて艦隊を指揮した男の声には、絶滅の危機を前にした怒りが込められていた。彼の背後では、シベリアの凍てつく風がシェルターを叩く音が通信に混じった。
アララトのエリス♀は現実主義者として身を乗り出し、ホログラムの目がたき火の光で輝いた。「選択の余地はない。培養装置は限られている。500台全てを新肉体に使っても、我々の半数も救えない。残りは子を産むか、死ぬしかない。だが、もう一つの選択肢がある。クロマニヨン人だ。この大陸には二万人の彼らがいる。彼らの女性を我々の子を産むために使えば、数を増やせる」
通信画面内にざわめきが広がった。シベリアのメドウサ♀は鋭く狂った笑い声を上げ、ホログラムで手を叩いた。「素晴らしい!彼らの女を奪い、子を産ませる!神々の再来だ!」彼女の不安定な声は、凍土のコロニーの暗い空気と共鳴し、場をさらに混乱させた。