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アルバム:「日出処」

「日出処」めっちゃ聴いてる。アルバムとしては「勝訴ストリップ」の雰囲気に近いかなぁと思った。そこに東京事変時代のバンドサウンドとか色々入ってて、椎名林檎の進化を感じる。

若いころに売れてしまった人の、過去の名声にとらわれて身動きが取れなくなっていく過程を見せられるのは辛い。
でも椎名林檎やデビットボウイはそうではなくて、年齢にとらわれず、低くなったキーを魅力にして、人生経験のすべてを作品につぎ込んで受け手に送り出してくれる。そこには驕りも怠慢もなにひとつなくて、圧倒されてしまう。若いころの怒りや疎外感が徐々に開かれたものになっていく。「日出処」の椎名林檎は清々しいことこの上ない。生きる、というのはこういうことなんだ、と改めて感じた。

個人的には「ちちんぷいぷい」「いろはにほへと」「ありあまる富」が良かった。初期の椎名林檎作品の音色のオマージュ? っぽいのもあって、ファンサービスが充実してるんじゃないかな。私は音楽やらないからわからないけど、ばんどぼーい&がーるずはこういうのわかるのかもしれない。

ほんとにほしいものなどただ一つ、ただ、ひとつだけ。だよねわかる。「STEM」の頃の林檎さんは祈りながら倒れてしまいそうだったけど、「カーネーション」では凛と佇んだまま、という感じがする。かっこいい。

「今」は「薄ら氷心中」みたいなイメージで素敵だった。
「静かなる逆襲」もかっこいいんだな……。「NIPPON」も大好きだ。

年を重ねるごとに、どんどんPOPに進化していく気がする。この先も楽しみです。

4件のコメント

  • 阿瀬 さま


    こんにちは。
    こちらにも、おじゃまいたします。
    こんなところに、こんな文章を書かれているなんて。
    3週間遅れですが、出しゃばらずにはいられません!

    なんて。
    ただ単にうれしかったのです。
    林檎さんのこと、を長らく休んだままで自己嫌悪に沈んでいるわたしですが、阿瀬隊員は孤軍奮闘しておられる。
    希望の光を見た気がします。

    なんて。
    林檎さんのことを書ける阿瀬さんがうらやましくもあります。
    わたし、もううまく書けそうになくて。笑

    「日出処」
    すごいアルバムですよね。
    あの人の創造の泉は、まだまだ枯れる予兆がない。
    いや、枯れそうになっていたとしても、きっとどこからか水を調達して、みんなの乾きをいやしてくれるでしょう。
    そんなエネルギーにみちたアーティストです。
    あ、あのひとが好むいいかたをすれば、いつまでもタフで力強いPOP職人です、椎名林檎は!

    このアルバムでは、わたしの大好きな曲は「赤道を越えたら」と、それに続く「JL005便で」。
    「走れゎナンバー」も、やるせなくていいですね。
    「ヒイズミくんにクラビネット弾いてもらおう」と作った曲みたいです。
    ギターとドラムを録っていたら、林檎さん自身も発見と感動があったらしいです。

    https://www.youtube.com/watch?v=Ba_lccNpB8g
    (この曲、やっぱり9度終わり。林檎さんの9度終わりは、コードのルートに対する9度というより、スケールのルートから9度なんです)
    ちなみに、「赤道」は村田さんのトロンボーンをメインにしたいと作ったらしいです。

    そして、大大好きなのは「孤独のあかつき」です。
    これでわたし泣きます。特に日本語版は号泣ですね。

    というわけで、王道の阿瀬さん路線にくらべて、わたくしの路線は、横道(ヨコみち)って感じです。
    「赤道」と「JL005」は、きっとオジサン〜おじいさんリスナー向けです。
    イヴァンリンスとピンクフロイドですもん。
    「孤独」は老いも若きもNHK視聴者向け、あるいはクリエイターに向けた応援歌。
    このアルバム、とにかくてんこ盛り、いろんなリスナーにアピールするし、初めて聴いても楽しいはず。

    もちろん、他の曲のすべてが素晴らしい作品です。
    「静かなる逆襲」は、かつて東京に出てきた時期の作曲のようです。
    時を経ても変わらない部分が曲のエネルギーになっていると思います。
    「ありきたりの女」には感動して、わたし「随伴者」っていう短編を書きました。
    「カーネーション」には男の自分の見識不足を痛感させられ、「ありあまる富」には物欲に目がくらんでいるところにきつい一発をくらい、「NIPPON」では誤解を恐れず自分の声を発する潔さにひれ伏し……。

    清々しいことこの上ない、彼女。
    どうしてこんな生き方が出来るのか。
    その秘密は、ご家庭にあるのか。
    「〜家では全然違いますう〜」
    のようにいってたきがするなー、作家さんとの対談では。笑

    https://www.youtube.com/watch?v=NEYBt7XaeuM&spfreload=10

    マジなことをいえば。
    わたしは思うのです。
    一度死んだ身、と思っている人は、やっぱり違うんだと。

    長くて散っている文章、すみませんでした!


    せなつ
  • 見つけてくれてありがとうございます!笑。
    知らず知らずのうちに、近況ノートを「宝物箱」みたいに使ってますね、私。好きなものを語る場所だと思っている……。

    「JL005便で」はかっこよくて私も大好きですよ。ピンクフロイドだったのか。切なさと哀愁と荘厳さがありますね。
    「赤道を超えたら」は演奏がゴージャスな感じがします。私はいくら偉そうなことを言っても安っぽい宅録?みたいなロックが好きなんですね、、、高校生の頃の好みをずっと引きずっている。でもこの曲はライブで聴いたら絶対かっこいいと思います。

    「孤独のあかつき」めちゃくちゃいいですよね……。日本語版は初めて聴いたとき私も泣きました。NHKのインタビュー番組のテーマソングなんですよね。というか動画、西加奈子さんとの対談ではないですか。うらやましい(西さんが)。

    私は「ちちんぷいぷい」のイントロがすごい好きなんです。赤道→JL→ちちんぷいぷいの緩急がいい。大好きです。で「今」でぐっと引き締めて怒涛の後半戦!みたいな流れがすごく好き。

    年々すごくなっていきますね、林檎女史は。捨て曲とかがないのが怖い。他のアーティストのアルバムと違って、縦横無尽でパワフルで、最後まで気が抜けないというか、密度がすごいなと。演劇見てるみたいだもの。


    でも、私がこのアルバムを聴こうと思ったのは瀬夏さんのエッセイのおかげなんですよ。瀬夏さんの情熱にあふれる文章に触れたから、買おうと思ったんです。あれがなかったら、今もまだ知らずにいたかもしれない。
    だから気持ちが落ち着いたら、また色々書いて教えてくださいね。瀬夏さんは洋楽の知識も豊富だから、音楽のエッセイ読んでいて楽しいです。楽器を弾く人の見方みたいなのがあるんだなぁと思って、いつも参考にしています。


    いつでも語りに来てください。瀬夏さんのお話面白いです。
  • やさしく接していただいて、ありがとうございます。
    救われます!

    「ちちんぷいぷい」は、わたしにとっては林檎ハードボイルドアクション(?)3部作の3作目です。
    1作目は「真夜中は純潔」
    2作目は「探偵物語」

    3作目では、さすが経験を積んだ女性、成熟さを感じさせます。
    「真夜中」は、もう二度とない少女時代という感じ。
    ああ、すべて愛しい。笑

    「JL005便」がピンクフロイドというのは、わたしの私見です。
    アルバム「狂気(The Dark Side of the Moon)」の2曲目「生命の息吹き(Breathe)」からつながる3曲目「走り回って(On the Run)」の冒頭の部分の雰囲気がそっくりだったのです。
    前曲のマイナーコードが消えていく様とか、延々刻むリズムとか、空港のアナウンスのような女性の声とか。
    ここでかろうじて聴けると思います。↓
    https://info.shimamura.co.jp/digital/special/2013/05/3259

    それにしても、林檎さんの狙った曲のつながりはニクいですよね。
    加えて大きな流れもすばらしい。
    洋画風「JL005便」、日本ドラマの「ちちんぷいぷい」、演劇「今」、フランス映画のような昭和のような「いろはにほへと」、東京事変風リズムの「ありきたりな女」、まさに現代「カーネーション」、そしてここから怒濤のエンディング……。
    最後はやはり涙を浮かべて終わる。

    なんていうんでしょう。
    ハデに見えて、じつは奥ゆかしいエンターティナ—。笑
    同じ時間に生きているわたしたちは、幸せですね。






  • ハードボイルドアクション三部作、わかる……! 私このシリーズむちゃくちゃ好きなんですよ。真夜中でスカのかっこよさを知り、密偵物語で旧アメリカ映画のような良さを、最後のちちんぷいぷいは「とどめ、お覚悟!」でハートをずばっと撃ち抜かれました……。またアウトロがたまらなくて。

    ピンクフロイドは聞いてみて「なるほど!」と思いました。今の打ち込み音楽みたいなかっこよさ。これは。しかもPV見てたらベッドごと離陸する妄想が描かれてて、JL……。あッ! って思いました。Too youngのところが好きです……。

    私間違えてたんですけど、イントロが好きなのは「いろはにほへと」だった。恥ずかしい。

    林檎ファンとしては恥ずかしい限りなんですけど、「本能」以来林檎さんのタイアップのお仕事あんまり好きじゃなかったんですよ。だから「日出処」も「わー、お仕事曲ばっかり」って聞く前からちょっと斜に構えていました。なので瀬夏さんに勧められてなかったら絶対買わなかっただろうなと……。自分の愚かさが恥ずかしい限りです。こんなレトロポップおもちゃ箱みたいな、素敵なアルバムに仕上がってるとは思わなかった。新旧のカラフルなおもちゃがたくさん詰まってて大人の遊び場みたいですね。楽しい。
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