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燃えるスカートの少女/エイミー・ベンダー

「熊本くんの本棚」を読んだんですね。すごく面白かったのでおすすめ。
物語にはまりすぎて、作中で熊本くんが読んでいた本が気になって仕方ない。
だから買いました。エイミー・ベンダー『燃えるスカートの少女』

去年『レモンケーキの独特な寂しさ』を読んですごくよかったから、作者のことを調べてたら、『燃えるスカートの少女』の名前が出てきた。熊本くんが作中でみのりちゃんに「何読んでるの」と聞かれて「燃えるスカートの少女」と答えてるではないですか、これはもう買うしかないと思った。
すごくね、良かったんですよ。熊本くん、さすが。

ごく短い、16編の小説からなる短編集です。

私が一番好きなのは『フーガ』でした。
『この娘をやっちゃえ』おまおれ
『癒す人』たぶん収録作品で一番すごい
『無くした人』深い。
『ポーランド語で夢見る』すごい
『酔っ払いのミミ』小鬼と人魚の高校生活

全編を通してひりつくような孤独とか寂しさがあふれていて、荒涼としている。でも清々しい諦めがある。癒す人を癒す人はなかなかいないという寓話かなと思ったりもする。
物語には繰り返し現れるテーマがある。遺産、アレルギー、家庭のほころび、父親の身体的欠損、母の不在、出奔、愉快で間の抜けた強盗、切り裂かれ、汚れ、傷つき燃えるドレス

登場人物を変えながら繰りかえされるほころびは世界を壊すほどの絶望を与えてくれるわけでもなく、森羅万象を無に帰すような力はない。ただ、皮をはいだところを無遠慮に触れられるような痛みが、長く続くだけ。

破綻の上にも、暴力の前にもいくつか日が昇るだけで世界は元通りに、手元には壊れた関係が残るだけで

『マジパン』だけちょっと難しく感じた。お腹に穴をあけた父、祖母を出産した母。私は嬉々として祖母の振る舞ってくれたスープを口に運び、祖母は自らのお葬式のマジパンを喜んで食べる。父は無言で、、、私には読みきれなかった。祖母の葬儀で母は何を祈ったのか。戻ってきても、嬉しさといら立ちを持て余して? わたしがそだてなおしてあげたかった、というようなこと?
むずかしい、わからない。

最後に英語の掌編が載ってるんだけどこれがまたよくて。
リズムというか息遣いが美しかった。
信頼のおける作家だと思った。『わがままなやつら』と『私自身の見えない黴』も手に入れたい。

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