https://kakuyomu.jp/works/16817139556526915372/episodes/16817330655426286982『花鳥風齧』弘徽殿の悪役令嬢編 歌枕の浅き夢・7を更新しました。
【文語和歌ver】
おだまきにいとしかくれば夕星に綾目もわかぬはたおりぞなく
【現代短歌ver】
愛しさを紡いで巻けば夕星に大人になれぬきりぎりす鳴く
【現代語訳】
おだまきに糸を掛ければ(懐かしい昔に巻き戻すというおだまきに愛しいと掛ければ)夕方の星に、そういうものだって道理もわきまえられないきりぎりすが鳴くの。
【解説】
・おだまき=糸を巻いて転がしておくもので、これが和歌に詠まれる場合にはだいたい古き良き昔に「巻き」戻したい内容の歌になる。
例)
古のしづのをだまきいやしきもよきもさかりはありしものなり(古今集)
古のしづのをだまき繰り返し 昔を今になすよしもがな(伊勢物語)
しづやしづ賤のをだまき繰り返し昔を今になすよしもがな(静御前の今様)
・いとしかくれば=「糸し掛くれば」と「愛し」の掛詞
・夕星(ゆうずつ)=夕方に出る星
・綾目=布の織り目、転じて物事の道理や常識
・はたおり=きりぎりす
「はたおり(きりぎりす)ぞ鳴く」と「機織り(織女)ぞ泣く」の掛詞
ところで古語のきりぎりすと言ったらコオロギのことらしいのです。ややこしいな。
※この和歌は二箇所掛詞がありますが、古文的に成立する掛詞なのかは自信がありません。ご了承ください。
◆その他解説
Q)梨壺は今上帝の妹で皇太子妃って言うけどそれって近親婚じゃないの?
A)母親が違えばOK。この時代の近親相姦は母親と同母きょうだいの場合の罪が重い。
Q)女御の位は従三位?
A)それぞれ違いますし、同じ人物の昇進もあります。女御だとだいたい三位〜五位くらいかな。
正直タンカ切るのに響きがカッコいいから従三位になりました。
Q)僕って一人称は平安時代にはないですよね?
A)はい。僕(ボク)という一人称は江戸時代が始まりだと言われています。身分の上下にかかわらず「〜くん」という呼び掛け方も。なので性別以前にかなり時代的にエキセントリックな一人称です。ただ、僕の由来は史記だそうなので漢文に長けたエキセントリックな人ならありえなくはないかなと思って僕にしました。
なお「僕(やつがれ)」という言い方はだいぶ古くからあったようです。
Q)女子は漢文が読めてはいけない?
A)紫式部の「一といふ文字をだに書きわたしはべらず(というふりをした)」が有名なのでそう言われたりはしますが、平安時代の女房たち、どう考えても漢文の素養(オマージュ)がないと書けない文章や和歌をいっぱいやりとりしてますので実際にはかなり勉強していたんじゃないかと。源氏物語自体、バチクソ漢文オマージュとかしてくるわけですし。
ただ、今でもそうですが「女はやるな」より「女でも甘えずにこれくらいはできてほしい、でもできないふりをしてほしい」のほうがめんどくせーなという場合はありますね。