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痒み帝国『カイーノ』


世界のすべての痒みの原因は、痒み帝国『カイーノ』の陰謀であることは周知の事実ですが、皆さんは彼らが季節の変わり目に活動を活発化していることに気付いておられますでしょうか。

梅雨というジメジメした季節に移り変わり、『湿度』というアトピーには敏感なパラメーターが変化する時期、奴らはこれを狙って痒み超音波を拡散しているのです。

「痒いばぶ! 痒いばぶ! うわああああああん!」

1歳児と化したタソは、善悪の区別がつかなくなり、クレジットカードを使ってお菓子をたくさん買った。

「うへへー、お菓子おいしいばぶ」

一定以上に悪化したアトピーへの対抗手段は、薬が第一だが、薬が効いてくるまでの間は、とにかく痒みから意識を遠ざけるインパクトが必要である。

タソは「久しぶりのお菓子」という手段で痒み超音波に対抗したのだ。

カキーーーン!

痒み超音波は跳ね返され、痒み帝国『カイーノ』に逆流した。

「ぎゃーーー! 痒いっ!」
「イヤーーー! 痒いっ!」
「もうやめてくれーーー!」

タソの普段の苦しみを味わったカイーノ帝国民は、次々に自ら命を絶っていった。

死んだ方がマシな痒さに耐えきれなかったのだ。

しかし、帝国の貴族たちは冷静にモメタゾンフランカルボン酸を塗りたくっていた。

これは貴族以上にしか伝わらない極秘事項だが、カイーノ帝国の真の目的は「モメタゾンフランカルボン酸」の販売利益の獲得である。

そう。これはマッチポンプ。

モメタゾンフランカルボン酸は、カイーノ帝国が作り上げた痒み止めなのだ。

帝国は他にも痒みに有効な薬をたくさん開発しており、痒み超音波を拡散しては、自ら地球人に変装して薬局で薬を販売している。

この陰謀が暴かれたとき、地球は痒みから解放され、真の平和が訪れるのだ。

立ち上がれタソ!

お菓子なんか食ってる場合じゃない!

まずはモメタゾンフランカルボン酸の販売元、岩城製薬株式会社に乗り込むのだ!

こんな会社聞いたことない!

きっとカイーノ帝国民の偽装会社に違いない!

そこから痒みを打ち滅ぼすのだ!



タソはジャンボコーンをもぐもぐしながら、岩城製薬株式会社について情報を探り始めた。

カイーノ帝国の陰謀が暴かれるまで、あと少し。



今日も、タソは元気です。


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