タソはカエルを見つけると、必ず彼の視界に入ります。
今日のカエル大先生は、タソのおうちの電気メーターの下に隠れて獲物を待ち伏せしていました。
お腹がおっきくて、沢山餌を食べている大ベテランの様子。
タソに気付いた大先生は、もじもじと手足を動かして逃げる準備を始めます。
しかし、タソはカエル語で敵意はないことを示しました。
「げごげーご」
すると、大先生は元のポジションに戻り、また餌が通り過ぎるのを待ち始めました。
タソのおうちの周りはたくさん田んぼがあって、この時期はカエルの大合唱が聞こえて来ます。
きっと今日見かけた大先生は、あえて水場から離れて、人間の近くに生息する虫を捕らえに来たのでしょう。
虫を駆除してくれるカエル様は神様です。
タソは虫が大嫌いなので、1匹でも多く食べちゃって欲しい。
でも、そう考えると、あの大きな腹の中にはグチャグチャになった虫が詰まっているということですね。
おっと吐き気が。
タソはカエルの解剖の授業は受けた事ないのですが、同世代の方の中には経験のある方もいるようですね。
解剖実験には大きなカエル大先生が生け贄になるそうです。南無南無。
えー無理だなー。可哀想で解剖なんかできない。ちゃんと食べるならいいけど。
タソは大きなカエルって見た事ありません。
両手じゃないと持てないような横綱級の大先生もいるようです。
それっぽい鳴き声は聞こえてくるんですけどね。
今夜もカエル大先生は電気メーターの下でご飯を食べているのでしょう。
そしてお腹いっぱいになったら田んぼに戻って婚活をするのです。
間違っても家の中に迷い込んだり、道路で轢かれたりしないことを願うばかり。
タソの家の中に入ってしまったら猫になぶり殺されます。
その時。
タソは夜空の下でただならぬ気配を感じ取った。
上を見上げると、空からタソを覗き見る巨大なナメクジのような生物が。
ナメクジはタソの視界に入ってニンゲン語で話しかけてくる。
「ニンゲン。タバコうまい?」
地球は彼らの虫かごだった。
その中で当たり前のように命を営んでいるつもりのニンゲンは、実は彼らに観察されるだけのモルモットであることを知らなかった。
全ては彼らの意のままに。
戦争も、平和も、出生率でさえも。
ニンゲンがここまで繁栄したのは、たまたま彼らに『気に入られた』だけの話。