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妄想探偵タソ

今日こそはタソを付け狙う犯人を特定してみせる。

タソは朝から自宅の周囲を調査しました。

きっかけは、昨晩怪しい人が家の周りを歩いていたから。
タソのおうちは夜9時を過ぎると、家の前の道路は誰も歩いたりしません。
そもそも、通り沿いにはタソの家しかないので、うちに用がある人か、犬の散歩、登下校の学生以外通りません。

奴は国道からの脇道から現れました。
国道沿いには、奴を降ろしたと思われるクルマが一台。
普通、そんなところには停めないという場所です。

時刻は0時30分。

奴は徒歩でタソの自宅前に向かって歩いて来て、怖くなったタソは家の中に避難しました。

玄関の鍵を掛けて、片手には110番をいつでもかけられるスマホ、もう片方には長さ30センチのレンチ。

玄関にはセンサーライトが備え付けられていて、人が来ると明るくなります。

タソはドキドキしながら玄関のドア越しに奴の気配を感じとりました。

センサーライトが光る。
しかし、足音や人の気配が感じられない。

タソは意を決して玄関のドアを開けました。
そこには誰もいませんでした。

そして今日、タソは奴の痕跡を探しました。

そこで見つけたのが、家から30メートルぐらい離れた場所に沢山のペットボトルと空き缶。
そこは夜になると暗闇で、タソの家を監視するのにぴったりの場所です。
道路はありますが、クルマが通り抜けできない幅になっているので、昼でも人通りはほとんどありません。

きっと奴はいつもそこでタソを監視しているのでしょう。
弁当の容器も捨てられていたので、長時間監視していることがわかりました。

タソは何のために監視しているのか考えました。
時々感じる殺気から、タソを殺そうとしている人物がいるのは間違いありません。

しかし、昨夜は午前2時から朝まで寝ましたが、タソは生きています。

ということは、殺し屋からタソを守っている人物がいるということです。

もしかしたら、昨夜の奴はタソの味方なのかもしれません。
夜通し殺し屋がタソの家を襲撃しないか、見張ってくれているのです。

殺し屋は1人とは限りません。
草むらや木の影、隠れるところはいくつもあります。

今日も暗くなってきました。

タソは昼間見つけた見張り役の定位置を見に行きます。
本当に奴が味方なのか知りたいのです。

今日は歩き疲れました。

これが妄想かもしれないと思えている内は大丈夫です。
でも、確かな痕跡を発見する度に、タソは「何だこれ」「何でこんなものが」という「何故」に支配され、「絶対に何かいる」と確信してしまうのです。

妄想が妄想でなくなった時、人は「何かある」に向かって異常行動を開始します。


そこには誰もいないのに。

何もないのに。


タソは今も殺し屋に怯えています。

殺される。

怖い。


「ゼロの証明」が納得できるまで、妄想探偵タソは「存在しない敵」を探し続けるのです。

2件のコメント

  • これはこのまま、ミステリー小説としていけるのでは?
    常に頭のネジが緩みっぱなしの私とタソさんは、ほんと正反対ですね(*-ω-)
    あまり良い言い方ではないのかも知れませんが、そのタソさんの感性が作品に生かされていると思います!
    ス○ーカー大佐の更新、楽しみにしているので、早く妄想を打ち払って、執筆活動を頑張ってください!
  • >双剣使いさま

    コメントありがとうございます!
    精神薬というものは凄くて、極限まで弱ったタソは、少し強い薬を飲んだら大分楽になりました。
    ただ、副作用があるのであまり飲みたくないのです。

    今回のお話で、「感性」を感じ取って頂けたのは嬉しいです。
    ミステリーは書いた事がないのですが、確かに今回のお話はミステリー気味でしたね。
    いつかそのカテゴリーでも面白い話を書いてみたいです。

    応援ありがとうございます!
    来月には第二章スタートできるように頑張ります!
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