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「君の名は。」をみた。

むろんテレビでやってたのを。


SFジュブナイルなストーリー部分は面白くて矛盾点などには気づかないほど楽しんだのですが(それでもやっぱり九月にあんな紅葉してるのは気になりました…飛騨とは九月にあれほど紅葉する地域なのかとか、軽装で山登りしてるけどかなり標高が高い山なのか、そんな山で一晩過ごした瀧くんはよく無事だったなとかは心の中でツッコミました)、それ以外のボーイミーツガールに纏わるちょっとしたことにいちいち引っかかってノレないというアンビバレンツな感想を得た映画でした。


あまりネガティヴなことを言っても仕方ないので面白いなと感じたことのみさらっと。

瀧くんサイドからみると「なんだか訳の分からん不思議な女に振り回されてるうちに段々その子のことを意識するようになり、でも好きだと自覚した途端に彼女はどこかに消えていた。なので彼女を探しに旅に出る」というわりとよく見る不思議ちゃんに振り回される系ラブコメのお話になり、三葉さんサイドからすると「少女時代に不思議な体験をして大人になった女の子のお話(女の子には一生に一度魔法が使える時期があるとかなんとか別のアニメ映画の登場人物が言っていましたね)」というこれまたわりとよく見かけるタイプのお話になります。
この二つのお話を人格の入れ替わりだの隕石の衝突だの民俗学っぽさを漂わせたSFとフォークロアでマジカルな要素と青春要素を足して、さらっと見られる一本のお話に編み上げられてることにしみじみすごいなあと感嘆した次第です。本当にすごい。
飲食店のユニフォームにあんな刺繍入れちゃうのはヤバくないか? 普通に黒い糸でかがってあげたらよいのに……とかそういうことには目をつぶろうという気になる所でした。



面白いというより興味深かったのは宮水家周りですね……。

主人公の母親が聖母的なイメージだけ残してすでに他界しているのはこの作品に限らない「あるある」ではありますが、あの町の長になるであろう男と結婚しあの町を救う男を呼んでくる娘を産んだという、あの町の命運(と物語の辻褄)に奉仕する役割を果たして退場させられたように見える宮水二葉さんの生涯とはなんだったのかと、物語の外にいるものとしてはつい考えてしまいます。まあ、作品の中で短くとも充実した一生を過ごされていたのだと納得するべきでしょう。

二葉さん父の、民俗学者→神職→町長という振り幅大きすぎる人生も気になりますしね……(ところでこの民俗学者が地元の神社の娘と出会ったことでこの町の住人になるという設定、相当デリケートな問題をはらんでいる気がするのですが……。ハリウッドで実写化される際はどういう形でクリアされるのでしょう?)


あの町を守るためには家族の人生も赤の他人の運命も犠牲にするという鉄の意思をもったマジカルグランマ宮水一葉が全てのことを裏で糸を引いていたのだった……という物語だったら非常に私好みの話であっただろうなあとせんもないことを考えてしまいました。ヒットしねえよそんな映画。

まあ、宮水一葉もどうして伝統を受け継いでいかなきゃいかないのか、「千年以上受け継がれてるんだから受け継がなきゃならんのだ。受け継ぐことに意味があるのだ」ぐらいしか答えを持っていなさそうだったので全てを糸で操るのは無理でしょうね……。

そんなことを考えると、宮水神社の人々を意のままに動かしていたように見える伝統だかなんだかの正体が恐ろしくて面白いなと思えるのです。まるで宿主をあやつる寄生虫のようですね、ロイコクロコリディウムのごとし。


そんなことをつらつら考えさせられた映画でした。

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