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映画「バリー・シール」

1970年代後半から1986年までのあるパイロットが巻き込まれた数奇な運命を描いた作品。

 CIAの作戦はベトナム戦以後、国内活動禁止や外国政府要人暗殺禁止などの制限が課されますが、そんな中でも中南米への介入を行っていた。
(911以後は暗殺禁止は解除されてますね。無人機・特殊部隊による大統領の認可に基づく殺害リストによる暗殺作戦はブッシュ、オバマ政権で急速に発展しています)
 そのためにコロンビアの麻薬カルテルやニカラグアの右派の反政府軍コントラへ肩入れしていたけど、表向きの米国の民主主義への大義が語られる一方で不正行為も行われていた。映画ではノース中佐が出てきますが、彼はイランコントラ事件の中心にいた人物で仇敵と化していたはずのイランへ武器売却してその資金で他の国の支援を行おうとしたりしていた。
そういう渦中に何も知らずに飛び込んでしまった人物がバリー・シールな訳です。
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」はウォールストリートと関わりのない紙くずの株を価格操縦して買わせるという詐欺でしたが、シールは麻薬を米国に持ち込み、武器をコロンビアやニカラグアに運んでいた。そしてパナマのノリエガとCIAもつないでいた。もう滅茶苦茶。そしてそういう滅茶苦茶さは当時のCIAの作戦には常にあった。
 そういう状況だから映画のような末路にしかならなかった(バリー・シールの英語版Wikipediaに彼の詳しい経歴が出てます)。

 80年代を想起する色設計。写真などカットインする編集、フックトオンクラシックなんて80年代の名曲を入れてくる音楽センスなどバリー・シールの生き急いだ狂騒曲を見事に再現していたと思います。

 面白いですよ。トム・クルーズが彼らしさを封じて演じて見せた作品としても評価出来ると思う。

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