「カクヨム3周年記念選手権~Kakuyomu 3rd Anniversary Championship~」のボツ稿を寄せ集めて公開しました。
「カクヨム3周年記念選手権~Kakuyomu 3rd Anniversary Championship~」とは、カクヨム発足3周年を記念して行われた地獄のマラソンダンスです。
2日から3日おきに発表されるお題に沿って小説を書く。
それが全部で10回。
およそ1ヶ月にも及ぶ過酷な企画でした。
平日だろうと関係なくやって来る締め切りに阿鼻叫喚が谺し、賞金を巡ってランキング争いが加熱。血で血を洗う地獄絵図が展開し、企画が終わる頃には死屍累々のありさまでした。
躍り疲れた哀れな廃馬たち――
その慰めとなったのが、皆勤賞の副賞である図書カードです。金額にしてワンコイン。労働の対価にはあまりに微々たるものでしたが、彼らには立派な勲章だったのです。
きっと金庫に保管したり、額縁に入れて飾っている方が多いことでしょう。運営のメールを見落としてもらい損ねた間抜けはわたし一人くらいであってほしいものです。
とにかく、そんな酸鼻を極めるイベントでしたから、参加中は誰一人として冷静ではいられなかったはずです。
限られた執筆時間のプレッシャー。
刻一刻と変動するランキングへの一喜一憂。
これらが神経をすり減らしていたことは想像に難くありません。
極限まで狭まった視野の中、ひたすら自作と向き合い続けることを強いられたあの1ヶ月間――
わたしもなんとか食らいつき最後まで踊りきりましたが、それはプライドをかなぐり捨てたなりふりかまわぬ捨て身の特攻にも等しいものでした。
たまたま評価を集める作品も生まれたりしましたが、基本的には自分の限界を改めて突きつけられたイベントと言えます。
自作に対して客観的になる時間も与えられず、書いたそばから尻を蹴飛ばして放り出さなければならない、その辛苦。
いまになって参加作を読み返してみると、当時の余裕のなさが実感されます。平時なら絶対に生まれ得なかったであろう文章、物語がそこにはありました。
それはさながら竹槍でB29に挑むような蛮勇。
よくこれで戦おうとしたものだとしみじみ思います。
今回、公開したのはそんな戦いの記録を補完するものです。
あの戦いの最中、人知れず生まれ、そして葬られた物語。
はじめから死産が約束されたような虚弱なものもあれば、作者が判断を誤って流させてしまったものもあります。時代の狂気を記録する意味でも、ここに公開したいと思います。
あの災厄のような1ヶ月間からもうすぐ1年になります。
はたして歴史は繰り返すのでしょうか。
そのときはどうか互いに正しい道を。
今度はもうメールを見落としません。