5年ほど前に書いたものを引っ張り出してきました。別作「クロスワードパズル」のボツ稿という位置づけです。

内容としては「焔暁生の炎の半生」と同様の手法を用い、とある小学生の12年間を駆け抜けていくように叙述した話となります。「焔暁生の炎の半生」同様、実在の事件からインスピレーションを受けており、こちらはよりストレートに事件を連想させる内容となっています。一定以上の年齢の方には何の事件をモデルにしたかすぐに察しが付くでしょう。

5年前というと、わたしの中で心理主義が全盛を誇った時代です。小説とは、何よりもまず、主人公の心理を克明に、筋道を立てて描写すべき、というのが当時の考えでした。というか、それ以外に話の組み立て方を知らなかった。

その性向に多少なりとも影響を与えたと思われるのが、同じく5年前に傾倒してた少年犯罪のノンフィクションです。それらの著作では、少年たちのいわゆる「心の闇」を解き明かす試みがなされており、真偽はともかくとして、そこに物語として共感を覚えたわたしは、それを創作物として表現したいと考えたのです。

「焔暁生の炎の半生」やこの「闇と怪物とクロスワードパズル」はそうした試みの一環として生み出されたもので、主人公の人生をそのはじまりから振り返る形で事件へと至る過程を筋道立てて描写しています。いずれも、2人称という形式を採用しているのは、彼らの内向性を際立たせるためです。

この内向性というのも、わたしにとって重要なキーワードの一つです。内向的な世界をいかに小説として表現するかに腐心してきたのが、書き手としてのわたしであるとも言えます。最近の作品では心理描写をほとんどしなくなりましたが、その点では揺らいでいません。表現方法が変わっただけです。

社会や、人間関係よりもまず、個人の内面に注目し、それを表現するために世界を築き上げる。

それがわたしの基本的なやり口です。心理描写の有無は表面的な違いにすぎません。