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『ラズベリーブルー』感想

※ファンタジー小説『ラズベリーブルー』(著:オトノツバサ)の感想。8話時点。
 ネタバレありなので、読んでいない人は絶対に見ないこと。









 久しぶりに奇をてらいすぎていない面白いファンタジーを見つけたという感じ。特に昨今では、前世⇒転生⇒異世界・ニート・チート、みたいなのが乱立しているところ、滅びた国の姫と騎士という硬派な設定。《霧》を倒すために小動物を利用するとか、キャッチコピーにあるとおり科学的な要素もあったりと、個性的な設定も数多く、飽きずに最後まで読めると確信させてくれます。もしかしたら姫の方は異世界転生的な要素があるのかな? と思わないこともないものの、そうだとしても問題ないくらい面白い。(10話読了時点で追記:科学や物理に詳しいということで異世界転生かなと思ったのですが、そうではない様子。早とちりでした)
 特に、前世に対する二人のスタンスが絶妙です。よくある転生ものでは、前世の失敗を繰り返さないようにとか、こういうことが前世であった、みたいな語りばっかりで、このキャラクターは前世の人物の延長でしかないんだなと感じることが多い。そこのところ、この小説の二人は少し引いたところから眺めている感じがして好印象。とりわけヒロインの方は前世の人物を批判的な目でも見られる強さがあり、とても魅力的に描かれています。
 あと個人的にポイント高いのは、三人称視点ということ。そのために旅立ちのシーンで、騎士の儀式を行う二人を感動の目で見つめる傭兵の心情を描いたり、父であり騎士団長でもある男の葛藤を描いたり、多くの魅力を余すところなく表現しています。まぁそこはたぶんに一人称視点小説に食傷気味な私の主観が混じっていますが。

 どうやら小説家になろうからの転載ということで、そちらへ行けば続きを読めるようなのですが、あえてカクヨムで待とうかなと思います。じっくり読み進めるに値する秀作です。

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