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『息子よ、父さんとイースポーツをやらないか?』感想

※異世界ファンタジー小説『息子よ、父さんとイースポーツをやらないか?』(著:なはこ)の感想。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890323342
↑『息子よ、父さんとイースポーツをやらないか?』へのリンク



 近況ノートに感想書くのもいつぶりでしょうね。そもそもカクヨムで人の小説を最後までちゃんと読んだのも久しぶりでしたが。
 以前感想を書いた作品と同じ作者さんの小説です。私は音楽でも小説でも作者買いをする人間なので、きっと私の好みだろうなという安心感を抱きながら読みました。そして嬉しいことに期待どおりでした。

 ただ個人的に、引っかかるところが多かった。
 私は評論家でもなければ、人の小説にケチをつけられるほどの読書家でもないので、単なる感想と思っていただければ。

・一話の序盤がわかりづらい
 読者は小説の読み始め、とにかく情報を欲していると思います。誰が主人公で、どういうストーリーが展開されるのかを、早く明らかにする必要がある(たぶん)。
 本作品では「父の突拍子もない提案⇒それに対する家族の反応は様々だった」と始まります。私はここで、誰をメインにストーリーが進むのかがわからなかった。
 そしてほしい情報を得られる前に、家族の容姿や食卓の内容という(悪い言い方をすれば)必要としていない情報が入ってきてしまうので、なんだか間延びしてしまったように感じました。
 「提案⇒メインの人物の心理描写」からの、家族の描写だったらわかりやすかった気がします。服装や容姿、家族の現状といった情報は、それが必要とされる場面で初めて書けばよいのでは、という感想。

・戦闘シーンがもったいない
 作者さんのアクション描写大好きです。
 ただ本作品はゲーム世界ということで、戦闘内で逐一スキルや装備の説明が必要になってしまう。それがテンポを悪くしているように感じました。
 また動作の一つ一つをステップとかの用語で書いているのが気になりました。「横に跳ぶ」なら、横に跳んだんだなと思うのですが、「ステップ」だと、ステップ⇒横に跳ぶこと、と読者が脳内で一度変換を挟まなければいけない。直観的に想像できないスキル名だとなおさらです。スピード感が命のアクションシーンで、そこに発生するラグは痛い。
 いっそあらゆる用語を排除して描写して、ポイントとなるところだけ「これは~というスキルだ」だったらより私の好みでした。それが作品の質の向上になるかは私は知らない。
 あと序盤にあったステータス表記、漢数字は違和感がありました。ゲームだとほぼほぼアラビア数字ですよね。というか細かい数値は戦闘シーンでそれほどの意味を持たなかったので、削ってもよかったような気がします。

・現実に寄せるか、「現代日本」が舞台のフィクションに寄せるか
 現代日本が舞台だからといって、リアルな世界に近いかはたぶん別の話だと思います。パンを加えた女子高生が普通は存在しないように(例えが古い)。
 「息子よ」という父親は、間違いなくフィクションよりでしょう。父親と三人で仲睦まじく出かける兄弟や、プロ並みにゲームが上手でアイドルに引けを取らない容姿の女子高生もフィクションよりです。
 逆に、事故が原因で被害者も加害者も人生が一変するところや、虐待の描写などは、かなりリアルよりだったと思います。
 このあたりの温度差で、正直なところかなり困惑しました。フィクションよりだとすると事故後の主人公達の境遇は厳しすぎます。リアルよりだとすると、一家を養わなくてはいけない料理人が指の怪我から血を流しながらゲームを続行するのはオイオイと思います。
 作品全体のスタンスというか、登場人物の意思決定の方向性というか、雰囲気がちぐはぐな印象でした。繰り返しますが個人の感想です。


 細かいところを言うと、アクションRPGでイースポーツが成立するのか気になっちゃったり、反射神経が良くてもゲームの操作は普通覚束ないよなと思ったり、ラストが駆け足に感じたり、青春ものを謳うには少々内容が鬱屈してないかなとか色々ありました。
 イースポーツものというより、人間ドラマの側面が強かった感じもします。もう少しどちらかに比重をかたよらせた方がわかりやすいかも。

 最後に変なフォローみたいになりそうでアレだなぁと思いますが、面白い作品でした。客観的評価は知りませんが私は好きです。上記のもろもろがあったので珍しく★2にしたものの、青春ものにふさわしい清涼感溢れるラストで気持ちよかった。
 あと終盤で長男の事情を明らかにする際、序盤の次男とのやり取りと似た言葉が使われたり、構成はすごくよかったと思います。
 ぶっちゃけ↑のあれこれも好みじゃないか?と思いました。

 失礼な表現が入っていたら申し訳ありません。以上、感想でした。

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