紫鳥コウ

同人誌の作成、投稿サイトでの連載、先月から始めた掌篇小説の「毎日投稿」――そして本腰を入れて取り組まなければならない、文学賞への応募作の執筆。日々、創作活動に励むものの、独り身で…

同人誌の「文字が大きい」という理由から、嫌な言葉をかけられることが何度もあった。だけどそれは、わたしの視力の問題と関係している。前回のイベントでは、即撤収を考えるくらいに酷いこと…

ある家族のデッサンです。

大学を留年した「僕」は、見事にカードゲームにハマっていた。バイトもしていない。実家からの仕送りだけで生活している。では、どこからお金を工面しているのか？――もちろん、父親の稼いだ…

小説家になりたいと思いながらも、なんの結果も出せずいる「僕」にとって、一番の障壁となっていたのは、自らの境遇そのものである――という言い訳を拵えたくなるくらい、「僕」には才能がな…

西洋哲学を研究していた美里は、親の勧めで「旧式のお見合い」をすることになった。しかも相手は、まったく好意を持てない相手だった。しかし、親たちは意気投合している。そんな親に言われて…

通いはじめたマッサージ店。施術をしてくれる彼を、どこかで見たような気がする。ゴールデンウィークに帰省しテレビを観ていると、母校の伝統行事の様子が映し出されていた。そして思い起こさ…

友人たちが創作論を闘わせているのを聞きながら、櫻井は同級生だった永野夕子のことに思いを馳せる。太鼓の練習では嗤われて、泳ぐのが得意で、突然死んでしまった彼女のことを。

立ち直れないくらいに挫けてしまった。頑張ることもできなくなった。夜の散歩だけが、僕と「外」を繋ぎあわせる。しかしある日、散歩の途中に「死」と出会ってしまう。記憶は「いま」を離れて…

いままで、たくさんの侮辱を受けた。罵詈雑言を投げかけてきた相手は、きっといまも悠々と日々を送っていることだろう。しかし、いまのわたしが置かれている「場」は、被ってきた数々の屈辱を…

中東部アフリカに位置する、ある国の歴史を研究する葉田洋は、一次史料のひとつとして用いる文書を通読する日々を送っていた。そんな中、一通のメールが飛びこんでくる。そこに書かれていたこ…

「おゆき」に逢いたいから、醜態をさらしてでも借金をする。すっかり文壇から見捨てられた朝山は、彼女のためなら身を滅ぼしてもいいと思っている。しかし儚くも、「おゆき」との交際は断たれ…

琥珀紋学院大学の文学部で教鞭を執る胡桃教授が応援しているのは、数十年ぶりのリーグ優勝を目指して闘うプロ野球チームだ。大学内外での激務により現地に行くことはできないが、たまの休日は…

風呂場に巣くった白蟻の駆除にかかる金額は膨大だった。その費用を捻出するのは両親であり無職の僕ではない。家族への負い目と傷ついた自分。自責の念は破壊欲へと繋がっていく。希望の光が差…

どうか、読み続けてもらえるように、書いてあげてください。

〈弟子〉を名乗るのならば〈師〉の言動を真似るべきである。素人の物書きである柴島ツメは、固くそう信じていた。しかし、親友の鹿野の辛辣な批評によって、その信念から脱しなければならない…

わたしは、執筆活動に励んできた。しかしある日、努力が足りていないことに気付く。そのことを教えてくれたのは、わたしの〈憧れのひと〉だった。

凛と弘樹。ふたりの関係性の変遷を描きました。とても短い小説です。誌面の余白にいれてくださると嬉しく思います。家族がお腹を空かせているものですから。

琥珀紋学院大学の文学部に勤める藤棚扇と躑躅柚子は、同僚が教えてくれたお寿司屋さんで夕食を共にすることにした。新鮮なネタが並ぶなか、ふたりとも炙りサーモンマヨを食べたいと心に思って…

同人誌即売会での初めてのサークル参加。そして前日までしていた大学でのバイト。約二年前の出来事のラフなスケッチです。

家族に先立たれた野瀬は、自分の命の短さを意識し始めていた。日常の些細なことに凶兆を感じてしまうくらいに、精神はまいっている。そんな野瀬に、決定的ともいえる「出来事」が訪れる。

一風変わった研究（尖った研究）をしている、大学院生の藍染兎花への風当たりは強かった。不遇で不当な扱いを受けてきた。それでも彼女はめげなかった。自分の信念を貫き通した。なぜなら彼女…

知り合いから譲り受けた風景画を見たとき、そこに描かれているものとは無関係であるはずの、「カコン」という音が耳に入ってきた。その「カコン」という響きは、一体、どこから聞こえてくるの…

尊敬している「師」に対面し、自らの創作へのモチベーションを獲得したその日、ある〈ねじれた〉夢を見てしまう。なぜ幸福な出来事を経験した日に、そのような夢に苛まれてしまったのか。それ…

大学三年生の布井には、恋をしている相手がいる。しかしその恋が、叶わないということも重々承知している。こんなに想っているというのに……。大学からの帰り道、布井は、彼女と付き合う甘い…

数多の物書きの中のひとりであり、プロの作家を目指している青山純は、自分に才能はないと自覚している。創作の腕を上げるために試行錯誤をするものの、結果はでない。 親友の長野均は、青山…

「くだらない小説」と言われてからというもの、誰からの連絡も断ち、孤独に創作活動を続けてきた。生半可な気持ちでは、プロになることができるはずがない。そしてその成果のひとつとして、掌…

ある日のバラエティー番組の収録。〈国民的女優〉陸奥矢雪乃の「付き合いたい芸人ランキング」が発表された。結果は、バラエティーのお決まりの展開となった。しかし発表の後、雪乃の顔は曇っ…

アパートの管理会社から届いた注意事項を記したチラシ。それを気に留めることなく、僕は母方の実家に遊びに行く。そこは居心地が良いだけではなく、僕の恋の相手である愛ちゃんまで帰省してい…

誕生日を粉砕されたことによる怒りと悲しみが、乱雑に書き記されています。

数々の逸話を持つ京極若狭守が、生涯で出会った風変わりな出来事の一つを、それを目撃した若侍の親類の者が語ります。 *1 本作は架空の物語であり、史実ではございません。 *2 京極…

大学院生の「ぼく」の恋人である大槻唱歌は、真っ昼間からハロウィンを楽しんでいた。唱歌から送られてきたコスプレ写真に見入っていると、電話がかかってくる。論文を書いている途中のため、…

食事に行く約束をした陽二と優子は、駅前で待ち合わせをした。お店に向かう途中、陽二は高校生の頃のことを回想する。決して晴々しいものではなかった、自らの青春。それでも、掛け替えのない…

全戦全勝のプレイヤーである雨宮杏華を倒せるカードは、一枚しかない。しかしそのカードは、あまりにも高額だった。親に頼み込んで、あれこれ思案をめぐらせ、同級生に頭を下げる。そこまでし…

人間界に現れたエルフを「エルフだと見破った」ぼくは、エルフの森の掟に従わなければいけなくなった。そして、ぼくたちは、思いがけない幸運を選び取り、不幸な宿命を受け入れる。しかし、後…

今年の春から琥珀紋学院大学に着任することになった藤棚扇は、授業内容を記したシラバスの作成をすっかり忘れていたことに気付く。提出の期日までには、あまり時間がない。そこで扇は、徹夜を…

具体的な物語のない散文です。 ※ガイドラインに則った範囲の性的な描写があるため、セルフレイティング（性描写有り）の設定をしてあります。ご注意ください。

欠落により斜陽の一途をたどる日野家の素描です。

カードゲーム『グローリア』を愛する〈グローリアスト〉であり、大学で西洋哲学を教えている藍染兎花は、カードパックを開封する生放送をしている。そのことを知るひとは、周囲にはいない。 …

洛中を訪れたマリー・アントワネットについての記録です。 *1 本文中に登場する文献は全て架空のものです。

夏の夜に、体育館で花一匁をすると、旧い制服を着た女の子が現れるという噂がある。三人の少女は、体育館に忍び込み、夜が来るのを待ち続けた……。

書斎の雨戸を閉め切り、うす暗い中で遺作を書いている。来客を拒絶し、鬼籍に入った妻と両親のことを想う。彼は、三人のいるところへ、自分も行くことに決めた。それでも彼は、晴れ晴れとした…

元日の「Ａ教授の一日」の素描です。この日は、大きな事件がひとつも起こらない、平和と言えなくもない一日でした。 ※「Ａ教授」は架空の人物であり、実在する人物を想定しておりません。

夢に向かって努力する妹のために、兄は身を粉にして働き、甘んじて苦しい生活を受け入れる。兄は思う。父と母が亡きいま、それが自分の使命なのだと。

プロの作家を目指して創作活動に励んでいる荻山洋は、親友で翻訳の仕事をしている鹿野唯から、様々なアドバイスを受けている。それらの大半は、批判的な内容ではあるものの、洋には的確な批評…

小説を書くことに人生をかけている荻山洋は、ある日、大学時代の知り合いが記した、自作の同人誌を酷評する文面を受け取った。無論、落ち込みもしたし憤りもしたのであるが、親友の鹿野との作…

甘酸っぱい青春小説です。掌篇小説です。特に文章や表現をお楽しみ頂きたく思っております。

伝説のカードゲーマーの兄を持つ奈緒は、徒党を組んで悪口を言い、兄を引退に追い込んだひとりに対戦を挑む。しかし、初心者の奈緒では歯が立たない。どうしたら勝つことができるのだろうか。…

掌編児童文学集を作っていきます。

例年にない大雪により生じた除雪に関する近隣住民とのいざこざは、中野家に重たい負担を負わせていた。それに、中野家の大黒柱である洋二郎には、他にも悩むべき事柄があった。そんな日々の中…