『1巻の顛末をまとめたあらすじ』スタートからエンディングまで
※現存する場所を舞台にしている都合上、地名などの名称を変えています。
※アナザーフェイスと違い、今度は長尺であらすじを書きます。
※2200文字ほど
舞台は長野県待本市。雄大な山々が周囲を囲う田舎の片隅に、主人公――御剣零次は住んでいた。零次は自らが通う秀峯学園の理事長、御剣零雄の息子である。本来であれば、将来が約束されたはずの彼であるが、残念ながら現実はそう甘くはない。この家には代々『より優れた方』に家督を譲るという取り決めがあったのだ。
そう、零次には実の兄、御剣零一がいたのである。
兄は既に成人しているが、学生時代の成績は零次よりも優秀で、かつ弱冠二十六歳にして一部上場企業の社長というポジションに立っている。そんな兄と比較をされたら、一介の学生である零次が勝てるはずなどなかった。
これまでの頑張りも全て無駄、そして権利は兄の手に。悔しさに滲む零次であったが、そこに零雄は最後のクモの糸を垂らす。復活チャンス。祖父の出したミッションを見事達成できれば、家督は零次のものとする(条件つきで)らしい。
願ってもないチャンスに零次は二つ返事で挑むことを決定する。まずは兄の赦しを得るために東京へ向かい、そして次いでミッションである『寂しさの解消』を達成できるネタを探すことにした。
ところで、零次には兄との対立の他に、頭を悩ませるもう一つの種があった。
それが、幼馴染含め、女友達四人+一人の駄メイドと呼ばれて久しい五人のメイドたちである。順番に姫依、玉藻、マキナ、恋華、凜風。代々御剣家に仕えている姫依を除き、残りの四人は駄目駄目だ。ぶっちゃけ彼女たちの雇用を護るために零次はこれまで努力をしていたと言っても過言ではなく、正直クビを切ることすらも考えたくらいには使えない人材だった。
しかし、零次は向かった先の東京でメイドビジネスに出会い、評価を一変させる。
これならばあの兄を超えることが出来るやもしれぬ。そう画策した零次は東京の土地で、初対面にも関わらず優しくしてくれたビジネスメイド、星野瑠奈をヘッドハントし、続く喫茶店でも宇佐美エルル、和歌月奏音らを買収することに成功……しなかった。
会社を建て、店舗を獲得してから出直してこいと告げられ、急ぎ長野の土地へ戻った零次は、瞬く間に会社を設立し、御剣の財産を悪用して店舗を買収&改修。彼女たちを加入させる算段をつけ、長野の土地へと引っ越すことがわかっていた彼女たちを見つけ出し、拉致監禁。契約を結ばせる。
順調に進んでいたビジネス街道であったが、しかしここに来て思わぬ伏兵。大人たちの事情が挟まり事態は一変する。零次のこの行いは、学園に不協和音を生んだとして謹慎処分、設立しかけた部活動――ビジネス部も白紙に戻されてしまう。
だが、零次は諦めなかった。なぜなら、彼らは社会の外圧、世間という病魔に侵され続けた、第二次ロストジェネレーション世代であったからだ。突如として蔓延したパンデミックは彼らから笑顔を奪い、マスクという重荷を背負わせ、ついには思い出を作る機会をも取り上げていたのである。
零雄が出した指令もまさにその寂しさを憂いてのもの。なればこそ、零次は立ち上がり全校放送をジャックして想いの丈を叫んだ。大人たちの都合で俺たちの青春は潰された、と。ならば自らの手で居場所を創り出し思い出を作っていくしかないのだ、と。
この呼びかけに全校生徒が味方した。部活動の加入者は零次たち駄メイドたちに留まらず、賛成者全員が加入する事態に発展。これに対し、大人たち教師陣は尚も食い下がろうとするが、そこに校長先生(女)が現れる。
子供たちの『今』を蔑ろにすることは誰であろうと赦さない。それに女性が可愛く着飾り美しくなるのを否定することは女性の尊厳をも否定すると一喝。それを受けて教師陣は渋々、部活動を承認、晴れて活動は再開される。
そうして研修を終えた先。無事に『メイ[ド]メイン!』一号店をオープンさせた零次たちは、予想を超える集客にまた一つ問題に直面する。どう見ても人手が足りない。
が、その解決手段はあった。人材派遣会社を運営する兄に助力を頼めばいい。零次は、自分のプライドを捨て、仇敵である零一に救援を依頼する。
すると零一は条件を付けてそれを承諾する。あろうことか、社長本人である自分とその妻、韮崎冬優子。以下数名がスタッフとして参戦してきたのである。こうして兄の助力を得たメイ[ド]メインはなんとか窮地を脱することに成功したのだった。
最初こそ不安視していたこのビジネスだが、一考の余地あり、価値ありと可能性を見出した零一は弟である零次を褒め讃えた。マスク世代とも揶揄される彼らの気持ちがわかるからこそ『やってみろ』と背中を押したのである。
もちろん、零一が作り出した記録を塗り替えることは難しい。少なくとも学業では零一を超えられないと悟っていた零次はこのビジネスで兄の記録を破ってみせると豪語した。
与えられた期間は僅か三年。失われた三年間を取り戻すにはあまりにも短い。だが、だからこそ零次は闘志を燃やす覚悟を決めた。
寂しさの解消。笑顔を失い、機械産業が進んだ日本社会ではあまりにも若者に選択肢がない(ついでに異性との接点もない)。その可能性を少しでも広げるために。金持ちである自分の立場を存分に利用する、と。
これは、若き学生社長と駄メイドたちが記す、ドタバタ駄メイドコメディである。