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暁人君

〈|龍殻泉瀑《りゅうかくせんばく》の術〉を使う暁人君。
 彼の顔色が悪いのはヘモシアニンを主成分とした青い血に由来しています。ヤマタノオロチを受容したことで血質まで変わっています。

 なお龍の血が青いのは瘴気まじりの猛毒の酸素に対し有利に働くのがヘモグロビンよりもヘモシアニンだったというだけで、深い理由はありません。生物種として不利な部分は特殊な龍気妖力で補う強引な設定があります。

 暁人君の術式は〈|雅龍淟星《がりょうてんせい》〉というもので、己に宿る龍神の力を借り受けるもの。暁人君は臥龍家三人目のヤマタノオロチで、二代目に次ぐ完全受容者。弐の幕では仔龍サイズの八岐を肩から生やす描写もあります。
 とはいえ十全に力が馴染むまでまだ時間がかかり、そのためには戦闘を通じて龍の力を馴染ませるしかありません。いきなり最強じゃあつまらないんで、そうしました。覚醒状態も時間制限、さらに覚醒後一定時間妖力さえ満足に練れないというデメリットもありますので、そうポンポン使えるもんじゃありません。

 私は作中の妖術に関して「こういう能力だが、同時にこれを犠牲としているorこういった弱点があるから、それを補填する運用法を確立している」という設定が根幹にあります。
 バトルをする上で明確な弱点がない能力は正直つまらないというか、人間味と同じで完璧超人って遠い異次元の生物みたいで、リアリティがないんですよね。

 弱点とか汚い部分込みで人間であり妖怪というか、実際民俗学的な妖怪にも「こんな方法であっけなく退治されました」って描写多いですし。塗り壁の足元棒で払ったら消えたとか、鬼は柊と鰯の頭がダメとか、天狗は生臭い鯖(産婆に由来する説が有力)がダメとか、面白い中には博打のルールを知らない天狗から団扇やら蓑やら取るだけとって丸裸にした話もあるそうです。

 そういう一見間抜けな弱点がないと、やっぱ可愛げってないんですよ。最強!無敵!最高の血筋と家柄!でも極度のシスコンでダメダメすぎるお兄ちゃんの桜花君とか。
 あの子子供できたら絶対親バカになるゾ。

2件のコメント

  •  バトル方面だけではなくて、人間ドラマ的にも、弱い所とかコンプレックスとかは書き手としては「美味しいシーン」なんですよね。
     自作で言えば、源吾郎君なんて「末っ子」「早生まれ」「見た目」とコンプレックスを三つ抱えています(※)それ故に最強を目指すとかっていう野望を打ち立てたわけですし。

     あと弱さの点で言えば、良く蕾花様から「搦め手が巧い」と評されますが、これも源吾郎君自体の「弱さ」に起因しています。彼自身、家庭環境からして相手に直接ぶつかって主張を押し通すよりも、強者に取り入っておのれの考えを認めて貰う方が「有利」であると学習してしまった手合いなので。

     またしても自作の話になってしまいましたが……弱いがゆえにあれこれ考えて強みを作る・強いからこそ脆い部分があるというのがリアリティになるのかなと思う感じです。夜中なのでまとまりのない文章で恐縮です。

    ※父親似である事は確かに源吾郎君のコンプレックスですが、実の所自分の容姿が大嫌いというほどではないのかもと思われます。
     あと余談ですが、源吾郎君は冗談抜きで兄姉とおやつを取り合って喧嘩した事は一度もないです。何となれば、おやつとかは兄姉(特に長兄)から賜る物でした。
  •  そうなんですよね。例えば椿姫ちゃんとか一見完璧超人なんですが、実はあれでも繊細だったり脆い部分があったり、「己に並ぶ強い男がいない」という不安もあったりしました。同時に、その「恋人が現れない不安」が弟妹への少し過剰な肩入れにもなっていたくらいなんです。椿姫ちゃんは己に課すハードルがバカみたいに高い子なので、一度弾き飛ばされて折れると、しばらく引きずります。割り切るまでの試行錯誤が意外と長いんですね。
     燈真君で言えば実家の家庭環境に問題があったり、不良生徒だった過去を悔やんでいたり、色々あります。己の不幸が我が子への子煩悩、椿姫ちゃんへの愛情に換算されているので、ある意味いい方向で変わった子ですね。実際椿姫ちゃんに救われたことも多いですし、互いに支えとなってます。
     だから桜花君は才能や力に溺れず、傲慢にもならず、真っ直ぐに育ったのだと思います。まあ彼は思春期迎えても屋敷でいちゃつく両親に呆れ散らかしているわけですが。

     さておき、人間性的な弱点が作品の深みになるのは、私もとてつもなく、首が千切れんばかりに縦に振って肯定します。

    「弱い自分の自覚、それまでの葛藤」もまた醍醐味ですよね。弱くなんてない、って意地を張っている時期の青臭さって、あとから書けないですもん。弱いなりの魅力とか、味わいって絶対あります。そして、そこがあるから最後の成長のカタルシスが大きいんですよね。

     源吾郎君や雪羽君は、まだ途中ですがまさにその葛藤のど真ん中にいて、読んでいて「俺もその苦しみが死ぬほどわかる」と思ったり、「そこは理解できない部分だけど、彼の過去を鑑みればそうなるのか」と勉強させてもらいながら読んでます。

     モテるモテないで言えばコンプレックスなだけで、それとこれとは別に顔自体は嫌いじゃあないんですね。というか、源吾郎君って勝手な思い込みですが、見た目に関する勝負は清潔感とファッションセンスで補うイメージがあります。
     私は一人っ子なので取り合いの経験すらないんですが、そうだったんですね。竜胆君と菘ちゃんも取り合うことはなさそうです。奇数個とかだったら素直に分け合うタイプですし(二人とも本心では争い事が嫌いなので)。まあそこに椿姫ちゃんか蕾花がいれば「お、余ってんじゃーん」とか言いながら横取りするんでしょうけど。
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