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〈前後昇降〉自画自賛

「空戦」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888422454


 「空戦」第2話を投稿したところで第1話について思うところなのですが、空戦描写に全振りするとはキャプションで断っているものの、このお話はドラマとしてもなかなかよくできてるんじゃないかと。

 〈前後昇降〉にはテーマがありまして、それはどうも「舐められてはいけない」ということだと思うのです。もちろん、語り手である須賀井中尉が何者かに対して「舐められてはいけない」と思うわけです。

 その対象は2つあるでしょう。ひとつはリース大尉です。さらに言えば占領軍です。離陸前の面会で須賀井はリースに反感を抱いてますし、上昇や巡航速度など、なにかとP-51をライバル視している。それで震電との一騎打ちをやってみせろとけしかけられたのだから、売られた喧嘩は買わねばならぬ。負けるわけにはいかない。ただ本来の任務はフェリーだから機体を傷めつけるような無理な機動はしない。そこはけじめを持っています。
 あるいは空輸指定された鍾馗3機を完調してピカピカに磨き上げたのも部隊全体の虚栄心ではないでしょうか。

 もうひとつは大嶽と笹川です。どちらかといえば笹川でしょうか。対戦闘機戦闘は大嶽より笹川の方が得意なわけですからね。その二人の技量は須賀井も高く買っているし、自分の方が階級が高いだけで経験は彼らの方が豊富だとも言っている。きちんと上官らしい強さを見せなければ彼らに「舐められる」のは必至なのです。
 だから震電との手合わせを自ら買って出る。自分のメンツを立てるいい機会だから部下任せにはしなかったわけです。もちろんそこには負けのリスクも存在するわけですが、それを取らなければ始まらないというのがスリルになる。
 結果、須賀井は勝つ。それは大嶽も言っているし、笹川については、後日須賀井の家を訪ねているところから、須賀井のことをきちんと認めたというのがわかるのではないでしょうか。

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