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 700万年ぐらい前、人類の祖先はチンパンジー、ゴリラと共にアフリカにいました。アフリカの東側にいたとされます。その頃、地球の気候が厳しくなり、東アフリカでは大地溝帯ができるなど大きな変化がありました。寒冷化と乾燥化によって熱帯林が減り、サバンナになるなどの変化が生じたのです。熱帯林には果物がいっぱい生り、食べ物は豊富で、そこでみんな暮らしていたのですが、次第に食べ物が少なくなりました。森が小さくなって草原が増えたのです。
 そういう気候の変化があった時に、ここが私の一番好きなところですが、森で暮らす仲間の中で、私たちの祖先は弱かったというのです。弱いと考えられる理由の一つが、小さな犬歯です。戦う時、動物はみんな犬歯で戦います。とくに大きくなると牙ですね。犬歯が小さくては戦えません。
 そこで、森の端に追いやられる。食べ物を取りに行くにも、遠くまで行かなくてはならなかった。しかも人類は家族で共食をするのも特徴ですから、それをもって帰らなくてはなりませんので、立ち上がって手でもち、運んで行ったという物語が書けます。つまり、私たちの祖先は弱かったので、気候の変化が起きた時に二足歩行を始め、その結果、後に言葉を話し現在のような技術をもつところまでつながったわけです。私たちの祖先は強かったからではなく、弱かったからこそ、工夫して新しいことができた、ということになる。
                   中村桂子『生きている不思議を見つめて』

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