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[あとがきに代えて] 屋根裏の怪異にまつわるこぼれ話

[名前について]
魔座神(まくらがみ)は、最初に彼女を発見した山向こうの横海村の人が名付けた名前です。
その村で災いをもたらすとして伝わっていた不吉な岩、「禍ツ磐座(まがついわくら)」の上にいつの間にかいたことからこう呼ばれました。
その後の歴史の中で、夜の真っ暗な闇の中で怪談を語るので「真っ暗神」、枕に頭を乗せて寝ようとするとどこからか怖い話をしてくるので「枕神」などの派生した名前が残ります。
地史研究サークルは鹿島才華の代では「枕神」という名称やその能力まで辿り着いていましたが、横海宗祇の参加後サークルは半壊し、半坂紗耶香の代まで活動正常化が進められた代わりに研究成果が失われました。
そのため紗耶香の時代では「真っ暗様」というマイナーな妖怪として伝わっています。

横海という名字は海の横に住んでいた一族だから、が作中の認識です。ただ私は「邪(よこしま)なものを産みだす神を抱えた家」、ヨコシマウミからヨコウミ、横海と連想ゲームで決めました。ネットで検索しても出てこないので、実在しないようです。よかった。

ずっと文字化けで「蜊∫炊」と表示されていた主人公の名前は「十理(とおり)」です。「言ったとおりに育つ」ようにという宗祇の思惑や、瀬奈の「誰かの言うとおりにしていると安心する」という性格から来ています。

半坂紗彩、佐藤龍一郎については特に考えず決めました。ちなみに瀬奈の旧姓は野寺です。
私の作品ではなるべく姓と名の後ろの音を合わせるよう気を付けています。作品世界で流行している命名規則だからです。戦国時代の子供が親から一字貰っていたことや、現代の子供がキラキラした名前を貰うのと同じようなもの……かと思います。


[犬井龍美について]
本作は最初、世界を滅ぼして終了しようと思っていました。
なのでこのキャラクターは「怖れるべきものを怖れず一番に死ぬ者」として書いてきました。
しかし後半を書いている間に、世界が滅んで終わるのは面白いのかと自問自答を重ねるようになり、今の終わり方に方向転換をします。
結果、手に余っていた感のあった犬井龍美は、別の役割のキャラクターとして動かすことになりました。

彼、そして彼女の正体がなんなのかは、今後の作品で触れる予定です。
方針は変えましたが、犬井の座った席は元々用意されていたもの。それをちゃんと伝えられるよう気を付けて、次は書いていきたいと思います。


[変更箇所について]
1/7から本日まで行っていた修正では、あらすじ、後編の章の名前、いくつかのタイトル、矛盾する描写、誤字脱字その他を改めました。
「少し先の現在」と題されていた話は「進まざる網目に糾(あざな)われた未来」と改題しています。これは端的に言うと、この話は本作が辿ったかもしれないifの世界を描写している、と捉えることにしたためです。
先に述べた通り、最初は怪異による世界の滅亡がこのストーリーのゴールでした。そのためショックが大きくならないよう先に世界が滅ぶことを伝えておこうという目的でこの話を書きました。
しかし事情が変わって、この話で起こっていることは実現しなくなります。
それを示すため改題いたしました。

ですが、「この話がifとして存在している理由」は別で設けてあります。
これは犬井龍美の正体と関わっているので、今後明かす予定です。


[魔座神という神について]
生まれた時点ではとても弱い神でした。放っておくだけで寿命か穢れで死に絶えるので、横海の一族によって継がれていったのは奇跡です。
鹿島才華より前の魔座神は「人の頭より上にある闇の中で怪談を語り、誰かがこれを聞く」ことでしか能力を発現できず、「鹿島才華が行おうとした「力の分配による新たな魔座神の生成」も不可能です。

ただ、横海家によって管理されたそれは人の生に災いをもたらすにはとても簡単かつ便利で、しかも足がつかない方法でした。
横海一族は最初、私利私欲のためその地の領主を暗殺するのに魔座神を用いましが、それを当世の権力者に見つかり、さらにその裏に潜む者たちへ引き渡され、現代にいたるまで暗殺稼業で利用されることになります。

魔座神は認知していない外敵に対処する方法がありません。
横海家は「私たちに逆らう者がみな不可思議な死を遂げる怪談」を何度か魔座神に語らせましたが、老化が加速した挙句、条件付けが甘すぎて該当しなかった刺客に何人も一族の者が殺されました。
作中で述べていた通り、魔座神という力にとって「怪談」は、相手を正確に特定し殺すためのツールです。それを正しく運用できないと、神々の列が与えた制限などもあって力は意図したとおりの働きをしません。
よって、横海家は神という強大な存在を有していながら、陰の権力者の言いなりにならざるを得ませんでした。

たった一回、我欲のために神を用いたせいで、自分たちの知らない大勢の怖い人たちに目を付けられてしまった。その事実から反省して彼らは、その後は仕える組織のためにのみ魔座神を用い、またその行いに責任を感じるようになったのでした。

鹿島災禍で横海の里が滅びてからは、宗祇が稼業を継ぎました。瀬奈の両親を凄惨な方法で殺し彼女を救って、子供を産ませて養育を任せてからは、十理に最高の環境を用意できるように暗殺に精を出します。滅多に家にいなかったのはこのためです。

暗殺は電話越しに語られる魔座神の怪談を宗祇が聞き届け、対象の経過を観察し死を確認するという方法で行われます。彼にとっては崇拝する魔座神の布教活動でもあるので、つい暗殺対象に話しかけてしまうことも多々ありました。
ちなみに海外の仕事は通常受けません。魔座神のスケール不足で、言葉の通じない人間の怪談を語っても実現させられないためです。
なので終盤で海外に行くことになったのは、ほぼ犬井龍美の強制力によるものでした。
仲介業者に一度仕事ぶりを見せたところ、「特定の特徴を持つ人間を食い殺す怪異を連れて行く方法であれば、海外でも仕事ができるのではないか」と提案されてしまい、そのテストのため彼は海を渡ることとなります。
もし彼が国内にいて、才華から「大事な所だからちゃんと見ていてね」とでも言って呼びつけられていたら、瀬奈は勇気を出して部屋に踏み入ることができず、十理は才華に言われるまま魔座神になり、世界は彼女の望む通りになっていました。



今のところは、これで書き損じの設定やこぼれ話は終わりです。
思い出して、追記することがもしあればタイトルに更新日時を書いて追記します。

長くなりました。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
心から、感謝を。

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