先日、第171回芥川賞・直木賞の受賞が決定しましたね。芥川賞は朝比奈秋「四十九日のサンショウウオ」、松永K三蔵「バリ山行き」、直木賞は一穂ミチ『ツミデミック』でした。
私は受賞が決定する前に候補作をざっと読んでいないので、しませんでしたが、多くの方が予想を立てていました。私が最初に見たのは斉藤紳士という芸人の予想で、彼曰く接戦だったそうです。そんな中でも見事に予想を的中させたのは素晴らしい。
一方、直木賞では特に青崎有吾の『地雷グリコ』が大きな話題を呼んでいましたが、落選してしまいました。ただ、私自身はあまり驚いていません。というのも、選評を読む限り、直木賞を受賞するには、単に面白いだけでは受賞に値しないようです。筆力の高さ、物語の構成力の高さが大前提で、その上でヒューマンドラマから浮かび上がる人間の心理、物語のカタルシス、主題の在り方や意義、主題と展開の有機的結合性など、選評を読み限り問われていると考えられます。綾辻行人、有栖川有栖、西尾維新、森博嗣らが候補にすらならないのはこういうこともあるからだと考えられます。
ちなみに、青崎有吾は同作で山本周五郎賞を受賞している。この賞はトガッた純文学新人賞で知られる三島由紀夫賞と対になっている、トガッた大衆文学新人賞であり、斬新さと刺激的な面白さが求められている、という印象です。直木賞に恵まれなかった伊坂幸太郎、森見登美彦、湊かなえはそちらを獲っています。文学賞にも傾向は存在するので、ある賞に落選してしまったことが、決してその作品が劣っているというわけではなく、運が悪かった、選考委員との相性が悪かった、ということが大きいです。
賞は作家のための文学祭りであって、決して読者のための文学祭りではない。では、読者は文学賞をどのように接していけばいいのか。文学賞は読者にとっての作家一覧表です。そこから未知の作家との出会いをする場だと私は思います。私のようにある賞の受賞作を全部一様に読むのではなく、候補含めて気になった作品だけをピックアップして読むのも、文学賞の正しい接し方のひとつだと思います。
勿論私は今回の芥川賞受賞作品もいずれ読破して、その全容をエッセイに綴っていこうと考えています。