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バックパッカー旅行記 フィンランド&イギリス編 ④森と湖の国 

④森と湖の国 

フィンランドに出発までは予定通り、ロンドンでバレエやミュージカルを見て過ごした。
大学院生時代の教授にイギリスに来ていると電話したら、
フィンランドからちょうどイギリスに戻ってきた頃に、彼の家でバーベキュー・パーティの予定があるらしい。
その時ゆっくり話そうと招待してくれた。

旅の後半は懐かしい人たちに、そうやって会えるだけでも良いではないか。
私は自分にそう言い聞かせ、スペインに行けない代わりに、
ロンドン周辺でゆっくり過ごそうと気持ちを徐々に固めて行ったのである。

ロンドンは公園や美術館などお金をかけずに回れるところは多い。
街をウロウロしていれば、あっという間に日にちは過ぎて行ってしまうだろう。
そして、今は何よりまずフィンランドが待っている。

とりあえずは目の前の楽しみに集中すること!
こうして気持ちを切り替え、私は次の目的地フィンランドに向けてロンドンを旅立った。

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ロンドンからフィンランドのヘルシンキへフライトした時、間もなく着陸となり、
眼下に近付いて来たヘルシンキの街。
上空から見ると、本当に森と湖で埋め尽くされていた。
こんな都市があるのだという感慨深いものがじんわりと湧いてきた。

ヘルシンキの街中を歩いていても感じたが、これだけ市内に多く森があるので、
都会なのに、まるで森で森林浴をしているかのような清々しい空気を感じられるのだ。
また、ムーミンが大好きな私にとっては、
フィンランドがムーミンを生んだ国ということも楽しみの一つだった。

ヘルシンキの空港にはイギリス時代の友人が迎えに来てくれた。
学生時代と変わらない笑顔が心底、嬉しかった。
今回はフィンランド人の彼氏も一緒だ。
とっても優しそうな人で私も安堵した。
友人は複雑な家庭に育っていたので、早く良い家庭を築かせてあげたいと、
学生時代からいつも願っていた。

到着した日は友人に連れられ、フィンランドの有名な音楽家で「フィンランディア賛歌」を作曲した、
あのシベリウスの名がつく公園などを回った。

フィンランドは聞いていた通り比較的安全でのんびりしていた。
さらに英語が良く通じるので、女性一人でも、とても旅行がしやすい。
私が訪れた6月後半はまさに白夜の世界だ。
夜0時近くても空はまだ薄明るかった。

次の日はちょうど夏至の日で、友人とそのフィンランド人の仲間たちと一緒に
キャンプに行くことになった。
その後ヘルシンキを離れ一人旅をすることにフィンランドでの予定が自然と決まって行った。

ただ、この夏はフィンランドが冷夏だった。
これは大誤算!
私は軽めの服装しか持っていなかったので
友人から厚手のセーターを一つ借りることになった。
さらに、この寒さのせいでキャンプが悲惨な思い出となる結果を
招くことになってしまったのである。

キャンプは湖のそばの森の中のキャンプ場だった。
男女8人で焚火を囲み、バーベキューをして、
のんびり歌を歌ったり、それは楽しい始まりだった。

唯一、驚いたのがトイレである。
自然に帰すという目的で当然水洗ではなく、
トイレの隅に(魔法?の)砂が袋に入って置いてあり、
用を足した後、その砂をかけておくのだ。
そうすると、バクテリアか何かの作用で自然に帰っていくらしい。
とりあえず教えられた通りにして用を済ませていた。

さて、その夜、寝る時になって、恐ろしく寒いことに気付いた。
私と友人を女性同士、一つのテントにしてくれたのだが、このテントは予備だったらしく、
入口をしっかり閉めるジッバーが微妙に壊れていた。
そこを通ってテント内に湖面から風が吹き込むのだ。
海風と同じ、水の表面が冷えたところを渡って来る風を想像してもらえるだろうか。


④ 終わり

※写真はキャンプした仲間たち。


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