• 創作論・評論
  • 現代ファンタジー

もはや怪談

ある方が現在のカクヨム読者の動向を探るために実験をしました。
連載中の長篇を今はやっているテンプレ満載の作品に見えるように細工し、新規投稿してどれだけpv数とフォロワー数が増えるか調べるというものです。
具体的には題名を長文にし、あらすじをわざとそういった作品に使われそうな語彙や言い回しに変え、本篇も短く区切って一行空けなどの様式に変え……と徹底した偽装を試みたとか。
その結果何と1週間程度でpv数が2000近く、フォロワー数も100人に行きそうな数をたたき出しました。

この結果に、実験者の方は驚くのを超えてどん引きしていました。
元になった作品のpv数は半年かけてようやくこの数に届く程度、フォロワー数も40人余り。それが体裁を変えた途端、数日間で追い抜かれたんですから当たり前の反応ではないでしょうか。
しかもこの方、実はテンプレ作品を猛批判している方だったんです。
「自分が書いてる他の作品見ればアンチなの分かるだろうに!」
ご本人はそう言っていましたが、見ていないからこんなことになったんでしょうね。
もはや怪談ではないでしょうか。

正直なところこの実験は掲示板やTwitterなどで行われる「釣り」行為に近いため、余り趣味のいいこととは思えません。
しかしその結果は読者が外見だけで引き寄せられて来て惰性で読む例が多いということを如実に示し、Web小説界隈の病理をえぐり出すものとなりました。
これでは前回撤退した人が語っていた「人の目に触れるための導線が壊れている」という批難が起こるのもやむなしでしょう。

私はテンプレ満載の作品の存在自体は否定しません。「別に軽く読めるようなものがあってもいいんじゃないの」と考えているので。
ただ存在を否定しないだけで、そのあり方には大いに疑問を抱いています。軽佻浮薄、粗製濫造、「主流」と奢るかのような振る舞い。「いい加減にしておけよ」というのが正直なところでしょうか。
まあ『天ノ川連邦見聞録』が普通の異世界転移ものではないのに、これらの作品と一緒にされて弾かれるということに対する私怨もありますがね。

さはさりながら、作者のみに責任を負わせるのは酷な話でしょう。確かに最初に書いたのは作者ですが、そこにやって来て読んで続きを寄越せと言うのは読者です。作者が書きたいからという理由があったとしても、それは否定出来ないでしょう。
外部でも当初テンプレ作品の氾濫は作者のせいとされていましたが、最近では「作者も読者が求めるから書いているのだし」と読者にも責任を求める声が上がり、悪循環が起こっていることを指摘する意見もあります。
そこで出たさっきの実験結果です。何ですかこれ、外面だけで寄って来るってさすがに何か勘違いしてますし問題があるでしょう。
そりゃただでさえはみ出し者の「文学勢」「文芸勢」とでも呼ばれ得るような人たちが、全く相手にされないし理解もされないわけです。

これまでの流れから見て分かるかも知れませんが、最近私は読者に対して猛烈な不信感を抱き続けています。
他人と比べる気がないのでひがみではありません。本気で疑っています。
最近ではとうとう突き抜けて、「そうしたいならもうそれでいいんでないの」とさじを投げかけています。
まあそんな私がそれでもここで書こうと思うこと、それこそが実は本当の怪談なのかも知れませんがね……。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する