中学高校生時代、部活で生態学の研究をしていました。
その際ご縁があり、著名な先生からご指導を賜りました。その先生が良く言ってらした言葉が、
「動物には心はない。その行動の全てに合理的な理由がある。生物はなぜそのような行動をとるのか、その理由を科学的に解き明かしなさい。まるで人間が行動しているかのように感情移入したり擬人化したりしないように」
あまり良く覚えていないのですが。だいたいこういった話だったと記憶しています。
今にして思えば「観察対象を主観的感情で捉えるな」、といった意味合いが強いお話なのだと思いますが、当時の自分としてはやはり疑問でした。先生自身は「人間以外の動物には『心』や『感情』はない」と明言していたのは間違いないのですから。
つまり犬が飼い主に甘えるのは撫でて欲しいからではなく、服従の意を示し主従関係を明らかにすることで自分の地位を安定化させる行為、なのだと言う事です。
生態学の入門書、コンラート・ローレンツ著「ソロモンの指輪」を読んでみてもやはり「動物に心はない」ように読めました。もっとも翻訳が酷くて脳みそが爆発しましたが。SFの翻訳もひどいのが多いと思いましたが、こういった初心者向けの学術書までひどいとは。あ、話が逸れました。
ところが、結局私には生物を完全に客観的に観察するのに必要な考え方やセンスが身につかず、さらにはウォーゲームとTTRPGにのめり込んでしまった結果、生態学は疎かになってしまいました。
それでもたまには平凡社のアニマなどの雑誌たたまには読んでいました。
そこで不思議な記事を見つけたのです。
ドイツでオオカミの研究をしている人物を取材した記事の中の一言でした。
「あのオオカミはなぜあのような行動をとるのですか」
その言葉に答えて、その研究者は
「そうしたいからです」
と答えたそうです。
これは、そう「したい」という感情、心を認めているのか? と驚くようなやり取りで、実際、記者の方も驚いたとか。
ただし、
・その行動については研究者にとって、研究の対象ではない行動だだったのでどうでも良かった。
・この研究者はそもそもが科学者ではなく(アマチュアの研究家)、「科学的発想」がなかった。
と言った可能性も考えられるので一概には何とも言えません。
それでも私には、もしかしたら、生態学にも何か変化が起きてきているのかも知れない、そんな気がしました。
あれからちゃんとした科学としての生態学に触れる機会はありませんが、もしかすると動物の感情や心についても異なったアプローチがされてるのだろうか。そう思うと少し興味がわきます。お話のネタにもなりそうですね。
いずれスタニスワフ・レムの小説についてもご紹介できればと思います。
ではー。