「読みにくいです」
神の一撃である。
心が全損した気分だった。
保険は適用されるだろうか。
何故読みにくいのか、高校二年生の彼は説明した。
「僕が読むジャンルじゃないからですね」
ほう、ジャンルが違うと読みにくいと感じるのか。
彼は異世界モノ、ホラー、純文学がお好みらしい。それほどのストライクゾーンを持ちながら、現代ファンタジーに免疫がないとはどういうこったい。
正直なところ、作者自身も現代ファンタジーではないような気がしている。
とはいえ、SFでもなく、空想科学辺りが妥当な気はしてるのだが、そんなジャンルは無かったように記憶している。
「夢を題材にしているようですが、夢の話とは違う気がします」
三話まで読んだという彼はそう指摘した。
その通り!!
夢の中でファンタジーをやろうぜ☆というファンシーなお話ではない。
わりとヒューマンドラマな側面も多く取り入れており、登場人物一人一人の個性には磨きを掛けているつもりだ。
最新話(この時点で19話)をピックアップするなら、白鳥座X-1というブラックホールについて触れていたりする。
広くやや浅く、物理学や宇宙論、自然科学などを多用に盛り込んで作者好みにしていることは陳謝しよう。
ちょくちょくオマージュしている部分も見受けられるが、ウケる世代は三十路以上と思いながら二十年後の日本を舞台にしている。
自己矛盾に葛藤してると彼が、
「先生にも紹介して読んでもらいます」
ちょおおおおっとまてええええい!!!
「いや、評価するなら人が多いほうが」
まてまてーーい!!
その発想はなかったわ、少年。
でもやめてくれ。
添削地獄になるのは怖いんだ……ホラーじゃん