• SF
  • 歴史・時代・伝奇

慶安江戸散歩(自作ネタバレあり)~江戸初期の甘味など~

 2023/4/28から「花のお江戸の肩矢ぶり★御天馬隊見参!」を連載し始めました。
 舞台は江戸初期、この頃は私たちが「江戸」と聞くとまず想像する町人文化の花開いた情景とは違って、まだ戦の時代を引きずっている少々荒っぽい時代でした。これからちょくちょく近況ノートにその頃の事を書いてみようかと思います。

 拙作は江戸を舞台に天馬を操る少女達が江戸の治安を守るために戦うというストーリーですが、時代的には関ヶ原の戦いから約50年後(1950年)という江戸初期に当たる頃です。後世「大江戸」と言われるほど人口も増え居住地も広がって町人文化が花開いた江戸ですが、このころは徳川が支配を盤石なものにする過渡期で大名のお取りつぶしも多く、浪人が増え世情は不安定となり騒然としていました。

 殺伐とした時代背景の中、登場人物に女の子が多いのでみたらし団子などの江戸の甘いものを食べるシーンでひとときの癒やしを……と思っていたのですが、ここでハタと困ってしまいました。
 実はまだこのころは国産の砂糖が流通しておらず(ようやく黒砂糖の生産が始まった頃か)、砂糖は国外からの輸入に頼っておりその量も多くはありませんでした。ポルトガル人が持ち込んだ南蛮菓子(金平糖など)や砂糖は超貴重品として支配階級の口に入ることはあっても、一般庶民が現在のような甘い和菓子を日常的に楽しめるものでは無かったようです。(米や麦芽を原料とした水飴はあったと思われますが)

第17話 泥(https://kakuyomu.jp/works/16817330656474668565/episodes/16817330658193145901)で音吉がりのをびっくりさせようと「泥でできたお菓子」と紹介したゴボウ揚げは、江戸初期の料理書『料理物語』(寛永13年)果子類部に載っている「ごばうもち」を参考に創作しています。当時としては高級な黒砂糖が入っている設定ですが、多量には使えずきっとほんのり甘い、ぐらいの味だったと想定しています。まあ、初恋の味と言うことで。

参考文献
松下幸子、他「古典料理の研究(八):寛永十三年「料理物語」について」『千葉大学教育学部研究紀要 第2部」千葉大学、31巻、P.181-224、1982年

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する