2023/4/28から「花のお江戸の肩矢ぶり★御天馬隊見参!」を連載し始めました。
舞台は関ヶ原の戦いから50年後の江戸初期、江戸の治安を守るため天馬に乗って活躍する少女達のストーリーですが、主人公の天馬乗り「りの」の相手役の音吉は瓦版屋の設定です。
と、ここでまた「江戸初期」の落とし穴が……。
時代劇で、なにか事件が起ったら辻で瓦版屋が口上を叫びながら瓦版を売って、人々が取り巻くというシーンを時々見ます。それで当たり前の様に瓦版屋と書こうとしたら……。「瓦版」という名前が文献上に出てくるのが1863年(なんと江戸時代の末期)。それまでは「読売」「辻売」「一枚摺(いちまいずり)」「絵双紙」等と表現されていたようです。
現存する瓦版第一号は1615年の大阪落城の記事だそうです。その後、同様の刷り物はあったのかもしれませんが、次に大衆伝達の手段として社会的に影響を持ってきたという描写が見られるのが1680年頃。火事の話題を書いて売り歩いたものを人々が我先に買い求めたと当時の随筆に書かれています。
庶民が自力で情報の伝達を行う事を恐れた幕府より1684年に「事件の速報などを載せた摺物」の禁令がでています。この頃は役人を警戒して編み笠を被った売り手が複数人一組で売っていたようです。が、瓦版の文化はすたれることなく連綿とつながって行き、元禄年間に花開きます。おりしも起った赤穂浪士の討ち入りネタなどは庶民を熱狂(幕府をヤキモキ)させたのではないでしょうか。
自作の舞台は1650年、瓦版の発展につながる萌芽が出ていてもおかしくないころでしょうか。道行く人に「さあ、大変だ、大変だ」と呼びかけながら読売を売る音吉のような先駆者達がいたのではないかと想像しています。
(某新聞会社と混同してはいけないと思い、「読売り」にしていましたが、瓦版の別名としては「読売」が使われているので今後訂正していきます)
参考図書
太陽コレクション かわら版新聞 江戸明治三百事件(Ⅰ)大阪夏の陣から 平凡社
奇妙な瓦版の世界 青幻舎 森田健司