これはまだ、私が小学生だった頃のお話です。 　 　私の住んでいる町には、小さな古本屋さんがひっそりと営まれておりました。 　お客さんは稀で、多分私が一番の常連だったと思います。…

　私には、三つ下の妹がいます。 　妹は何でも私の真似ばかり。私が持っているおもちゃを欲しがるなんてしょっちゅうで、大切にしないので決して貸しません。 　妹が使うと、すぐに物が壊れ…

六月の雨は、幼かったあの日を思い出す。

あれは、私が小学生五年生の頃だったでしょうか。 　 　お盆といえば、父の実家である祖父母の家で過ごす事が毎年の恒例行事だった我が家。 　私は、あの家が苦手でした。

　川に沿ってできた桜並木。桜咲き乱れ、その花が通り抜ける風によって舞い散る様が、僕の心を掴んで離さないのだ。散った花びらは川を流れ、薄い桜色で川を染めていく。 　夜も肌寒さから抜…

　何処かへ行ってしまいたい。 　そう、思った事はないだろうか。 　何処か行きたい場所があるのではなく、今いる場所から何処かへ行きたいと。

　正に月の女神が舞い降りたかの様な美しさであった。月光に照らされた黒髪に時折黒い瞳が見え隠れする。その瞳の奥の妖艶さが、世の男共を虜にしているにだとか。 続編『月の女神は甘く囁…

　今日生まれた。 「おめでとう」 　最初に言われた言葉は、至極単純なものだった。

　ガイノイド。 　アンドロイドの女性型である言葉である。 　それが、私。

　『七』とは、昔から悪縁がある。 　羽燕は、隣で眠る恋人を前に頬杖つきながら思い耽る。 　夏が始まろうとするこの頃、宵の口に突如現れた月の女神と称される女人、香月と七度目の逢瀬に…

　名も無き小さな橋の下が、二人だけの秘密の場所だった。 でも、もうそれも終わりだ。