・可読性
・質
・新人賞一次通りそうかどうか
さて、キタノユさん宛のとこでも少し言及しましたが、この企画の近況ノートは基本的に対象者以外のひとも当然目を通すだろうと想定しています。ゆえに今回も同じように考えていてほしいわけですが、あえて強く明記しているのはなぜか。それは、今回のノートはわたしが読むまでもないと判断した人たち向けの内容も半分含んでいるからです。さて、前置きはこの辺にしてさっそく始めます。
まず、可読性に関してですが、中くらいって感じです。キタノユさん宛のところで言及した通り、わたしは可読性とは三つの要素が関わっていると考えています。ひとつめは「漢字のひらき方」、ふたつめは「ルビの振り方」、みっつめは根本的な「文章表現のセンス」です。今回の場合、ルビとセンスの部分はクリアしていますが、漢字のひらきがほぼなく、漢字が詰まっている文体になっているため、読みにくさが生じてしまっています。ただ、難読漢字、一般語彙だろうけど読みが難しいと思うからルビを振っておこうという気配り自体は見受けられるため、完全に可読性が死んでいるというわけではありません。肯定材料と否定材料がどちらもそれなりにあるため、「中くらい」という評価が妥当だと判断しました。ちなみに、今回の場合は漢字のひらき方を問題にしましたが、当然漢字のひらき方もルビもまともに振れていないひとであったり、逆にひらいてるけどルビ振りをサボっていたりするパターンもありまして、どれも一言でいえば可読性を損なっているわけですが、どういうふうに損なっているのかをいちいち説明するのがクソめんどくさいということが多々あります。それが、今回の近況ノートのテーマでもある厄介な中級者問題につながっていくわけですが、いったんそれは置いといて。
次に、質に関しては初手のリスカシーンがむだに長く、最初に意味深なシーンを置くにしても尺を取りすぎかな、と。尺の話をするならキタノユさんの0話はどうなんだ、って話になるかもしれませんが、あっちは可読性がすぐれているので読むのが苦にならないんですよね。可読性の優れている、劣っているというのは、パッと読者に呑み込んでもらえる情報量に直結しておりまして、優れていると文字数カウント的には長くても体感は短く感じますし、劣っていると文字数カウント的には短くても体感は長く感じるわけです。だから、いまの力量のままリスカシーンを見つめ直すと可読性のわりに長いので、もっと短くしてとっととお話の本題に入ったほうがいいということになるわけですが、意味深にリスカし終えたあとはあらすじ通りタイムリープみたいなのが始まってしまい、「・・」でやけに強調してくるからメタ的には「まぁそういうことなんだろうな」って分かるわけですが、お話的には思わせぶりな言い回しばかりが散見される、とくに面白くもない日常会話を見せられ続けるという。
ここで重要になってくるのが、そもそも筆者は作品を通して「お話」を見せたいのか、「文章技巧」を見せたいのか分からないということです。ありきたりな表現を用いるなら、なにをしたい、なにがしたい話なのかあまり伝わらない。あらすじを読めばいいという返しをしたらその時点で終わりですし、意味深な言い回しで謎を散らしておいて、謎で読者を引っ張りたいとするわりには展開が遅い。最初の独白リスカから急に空気を変えるのは置いてけぼり感が強いですし、そもそもライトノベルで冒頭意味深シーンが4ページ以上続くことは、まぁ、まずないでしょう。筆者のTwitterを軽く覗きましたが、演劇関係の専門学校卒とか。舞台と同じノリで登場人物投入してる可能性があります(未読の読者向けに簡単に説明すると、一話目でキャラが複数人出てきます。二話目でさらに追加あり。初手のリスカ自殺の際、主人公を発見するのが「"名前付き"の二人」)。
新人賞に関しては、文章が一部できているので、一次は通るかもしれません。ですが、その先は厳しいというのが妥当なところでしょう。キタノユさんのときと温度感が違うのは、キタノユさんが明確に個性を確立しているのに対し、こちらの作品はそういう個性の確立には至っていないからですね。ついでになんか筆者以外のひとが作品に関わっていて、登場人物になってる?とかなんとかあらすじに書いてありました。つまり、わたしが〇〇というキャラクターについて下手なことを言うと筆者以外にダメージが飛ぶ可能性がありまして、逆にそれで文句を言われる可能性がある、あるいはそのキャラクターは自分のものではないから責任はもたないというかわし方をされる可能性があるということです。面白いですよね。
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さて、もうすでにけっこうお腹がふくれてきているかもしれませんが、最後にもう少し続きます。
こういう感想企画の際、明確に割に合わない領域に属している人たちというのがいます。皆さん、どういう人たちか分かりますか? わたしは、中級者だと思っています。キタノユさんのように明確に文章を書き慣れている上級者相手だと、創作能力のベースができあがっているので、応用的な助言程度で済みます。逆に町さんのようなみずみずしい初心者であれば、これからたくさんのことを吸収して成長していく可能性の高い状態なので、こちらも初歩的な助言から積み上げやすい。両者に共通しているのは、どちらもある程度平らであるということです。ベースができているからこそ平らであるのと、そもそもベースがまだできていないからこそ平らであるのと、状況こそ違いますが「平ら」という点で一致していることが分かるかと思います。
一方、中級寄りの方々は上級者のようなベースができていません。けれども初心者とまったく同じかというと、多少は積み上げてきたものがありますので、まったく平らとは言えません。可読性ひとつ取っても「漢字のひらき方」→できてる、「ルビ」→できてる、「センス」→ないとか、ルビとセンスは問題ないけどひらき方に問題があるとか、ひらき方とセンスは問題ないけどルビができてないとか、まぁ、ちょっとイヤになる程度にはパターンが多いわけです。で、ぶっちゃけそういう人たちって半端にできている部分もあるせいで、指摘すると反発する可能性もあって面倒なんです。想像してみてください。上級と初級の平らな面に対して、こちらも平らを合わせにいくのは簡単ですが、中級の凹凸激しい面に合わせていこうとすると、こっちも毎回その凹凸にかみ合うように細かく調整しないといけないわけで、とても手間がかかります。今回はわかりやすくするために「可読性」を軸に例えを出していますが、質の面でも同様です。
ゆえに中級者の皆さんに対しては「お話」を見せたいのか、「技巧」を見せたいのか、それをまずはっきりさせたほうがいいでしょう。どっちも! とイキるのであれば、先に最低限の可読性は確保しましょう。いいや、わたしはお話で勝負するということであれば、リアル鬼ごっこレベルでキャッチーなネタを用意できるように頑張りましょう。そうしたら可読性が終わってても許されると思います。
以上です。