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KAC20228

「私だけのヒーロー」


「見た目は冴えないし、お金持ちでもないけれど、やっぱりパパは私だけのヒーローです」


「……ですって。良かったわね。でも本当のことを言わなくていいの? あなたが地球を守る本当のヒーローだって」
「ああ、構わないさ。みんなのヒーローになるより、あの子だけの……そして、お前だけのヒーローであるほうが、私にとっては大切なんだ」


「はいカット。お疲れ様でした」
 その言葉とともに、クランク・アップの花束を受け取った俳優はさわやかな微笑みを浮かべる。彼を取り巻く人々を尻目に、ヒーロー・スーツを脱いだスタントマンは、静かに現場を後にする。もう真夜中だ。家族を起こさないように、男は静かに鍵を開ける。しかし暗い部屋の中で、妻が微笑んで待っている。


「お疲れ様。これ、あの子が授業で書いた作文ですって。ほら、ここなんて良いこと書いてるわよ。……見た目は冴えないし、お金持ちでもないけれど、やっぱりパパは私だけのヒーローです」


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