知り合ってからなら11年、トランプやりはじめてからでも8年くらいになる知り合いがいるんですけど、昨日トランプやってね。シャッフルしながら「そういえば、これなんて言います?」って聞かれたんですね。

「シャッフル?」
「じゃなくて」
「てんを切る?」
「それだあーー!!」
 そんでなんか突然歯をむき出しにして笑いながらドーン!! って言われて、その後の記憶がなく、今なんか俺上半身しかなくてっていうか上半身が二つあって腹を境に点対称の体があってすごく不便なんですが(とりあえず便宜上「下」と名付けられた俺がこれを打ってます、起きたのが遅かっただけで「下」扱いになるの酷くないですか?)、これもあの不気味なサラリーマン風の男の言いつけを守らなかった罰なのかなって、今はそう思っているのです。完。




 じゃなくてね。

 その、「てんをきる」って北海道方言だっつうんですよ。びっくりして。でもなんか確かにどうやら辞書には載ってないらしい。つまりシャッフルのことですよ。

 でその知り合いは東北の出なので、カードゲームやって「てんきって」と言われて、「なにそれ、最近流行ってる言葉?」みたいなリアクションしてなんだこの蛮族はって思われたらしく、それは気の毒になって思ったけどまあ我々の中には当然の語彙としてあるから、まさか方言と思わなかったシリーズの一つとして処理しそうになったんだけど、いやちょっと待てと。

 冒頭に書いたが、この知人とはもう8年来のトランプ仲間で、数限りなくトランプゲームはおろか、カードゲーム、ボードゲーム、リアル脱出ゲームを共にしてきた。別にずっと二人っきりってわけでもなく、ほかにメンバーがいたこともあり(特にトランプはナポレオンをやってたので、最低4人)、その中で、ただの一度も我々は「てんをきって」という発言をしなかった、少なくともこの知人相手には、ということになる。

 めだかボックスのしりとり編かよ。誰だよ仕切ってたやつ。こわ。

 そもそも「てんをきる」ってなんなの。切るはまあいわゆるcutでしょう。カードカットとは言うもんな。切り札を切るとか(頭痛が痛い)

 点?

 点というのはそれ以上分割できない最小の要素のことでしょ。面積を持たないマーカーというか。だから切れないのは自明というか定義より明らか、それを切るわけにはいかないし、トランプ上に点って特にないわけで。

 じゃあ天か……?

 その昔、北海道に天を覆うような巨大な【厄災】がいてね。白面の者とかいろんな名前で呼ばれてたらしいですけどね。ま、もう道民にとっては「天」そのものですから。子供なんかはあれが「天」だって信じ込んで、太陽なんて見たことない。だから素直に「天」と呼ばれるようになって長かった。もう人類はかまくらの中で隠れて暮らしてたんですよ、細々と。
 したらなんかそこに、どこからか青年が来てね。こいつが賭け事が好きで、そのスラムみたいなところでなんかカードゲームをやってた。でも弱かったんですって。そんで、大富豪とか(この設定でここで大富豪やってんの!?)の後に、おらカードを切れよって言われるのは大抵負けたやつ。だからいつもシャッフルをさせられてたわけですが、ある時もう賭けるものは下着も賭けた、もうすかんぴんもいいとこってなった時に、青年はカードをシャッフルしながらこう言った。
「仕方ないなあ、今度負けたら天を切って来ますよう」
 これがバカウケした。よおしやってみろ、と笑われて最後の勝負、3で革命キメて勝ったかと思われた青年が、次に8切りからのジョーカー込み革命で負けてね。まあ大盛り上がりですわ。それでも皆んな助け合って暮らしてるわけだから、そんな「まじで天を切ってこい」なんて言わなくて、その日はおひらきになったんだけど、翌朝。

 彼らは陽の光で目覚めたんですよね。
「眩しいなぁオイ、誰だよ灯りを消さないで寝た奴ぁ。油だって貴重なんだぞ」
「ちがう……違うんだよ……外を見てみろよ……!」

 「天」は本当に切られていた。

 その後の青年の行く末は杳として知れなかった。天と相打ちになったとも、もともと何かの使いで、使命を果たしたからカムイの国に帰ったとも言われた。ただ、言葉だけは残った。ゲームに負けてカードを切るとき、みんながこう言った。「しょうがねえ、天を切るか」
 そしてあの青年のことを思い出した。裸になって照れたように笑う、彼のことを。



 的なことがあったんじゃないかなあと思うんですよね。