昨日ツイッターの広告で「透けじゅわティント」ってのがあがってきて。新製品の口紅みたいなんですけど。
この「ティント」部分の意味がわからなかったわけです。透け、は透明感みたいなことでしょう。じゅわ、は潤い。ティントはさっぱりわからないけど、こう並んでいるということはおそらく、「発色がいい」とかそういうことだと思ったわけです。
はい。そうですね。皆さんがご指摘の通りです。私はおろかな人間です。
「ティント」というのは染めるという意味で、口紅ってのは口の上に紅を「塗る」わけですが、角質ごと染めるタイプの唇を彩るアイテムのことを指す。うわー体に悪そー、っていう感想はさておいて、とにかく、ようするにこれは「口紅的なもの」を指す名詞だったわけです。
イヤ何も、この言葉を知らなかったからと言って私はおろかである、とそういうことにはならないですよ。知らない言葉なんて沢山ある。そう言ってくれる皆様もいることでしょう。俺だって、何も好き好んで諛言を呈しているわけではない(これは「ゆげんをていする」と読んで、へつらって言う、みたいな意味らしいです。使い方が間違ってる可能性もあります。知らない言葉って沢山あるよねの一例です)。
そうじゃあなくてですね。俺はこれを形容詞だと思ったんです。上に書いたとおりです。「透け」「じゅわ」「ティント」は並列の関係にある、と思ってしまったんですよ。
あまつさえ。あまつさえ俺は、そのことを正当化しようとした。32年間生きてきて、沢山の文脈を判断してきた俺に伝わらない、ということはこの文章は(文章か?)悪文である、とそう断じようとした。
これです。これが私がおろかな人間である証拠なんです。皆さんのご指摘の通りです。
このことに気づいたときにはハッとしましたよね。
というのは、今日、これはちょっと面白い言葉だなと思って「透けじゅわティントって言葉があってですね。意味わかります? ティントってのは口紅の亜種みたいなものらしいですけどね。わっかんないですよね。大体、透け、じゅわ、ティント、って並ばれたら、ティントも唇に与える何かしらの属性だと思って当然じゃあないですか」って話したんです。
そしたら。
「あのお。『ゆるふわメイク』って並んだときは、メイクは名詞ですか? 形容詞ですか?」「化粧、ってことだから名詞ですね」「『もてかわボディ』のボディは?」「体、だから……名詞……ですね」「『おフェロ顔』は?」「名詞……です……ね」
あ。そっか。その系統か。なるほど。
と思いかけたところで、とどめの一撃。
「それツイッターで流れてきた広告なんですよね? じゃあ、ティントそのものの画像もあったんじゃあないですか? あなたの言うところの、『沢山の文脈を判断してきた』人間であるならば、そういうおしゃれ用語からの類推で『透けじゅわ』部分が形容詞(節)、『ティント』がそれがかかる名詞であること、そして『ティント』が口紅に類する化粧品であることがーー類推できても良いのではないですか。それを棚に挙げてあなたは言葉を狩ろうとした。他人が一生懸命考えたキャッチコピーを足蹴にしようとした」
ちがう。ちがうんだ。俺は、そうじゃあなくて、ただ。
ちょっと面白いと思って。軽い気持ちで。
陰鬱とした男は地獄の底から響き渡るような声で云う。
「あなたはーーおろかな人間です」
そうだった。私はおろかな人間です。