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手書きの文字の暖かみ

 聞くところによるとなんか最近の中学生は行書を学んでいるそうである。
 行書???? って思ったけどまあなんていうんですかね、美しい国日本みたいな、そういうことなんでありましょうか。でもまあ確かに、わざわざ美術館に足を運んだりはしないけれども地下歩行空間なんかで市井の人が書く行書の書道を見かけることはこれあって、でさっぱり分からんのですな。なんすかこれ的な。貼ってあるということはまあ、いいんだろうけど、何がいいんだかすら分からない。せっかく日本に生まれたというのにこの体たらく。もったいないような気もする。

 でなんで行書がそんなにわけ分からないかという理由のひとつに、どうも書き順からして違うということがあるような気がするんですね。
 「は?」と思われるかもしれないけど、いやちょっと落ち着いてください。たとえばですけど、手書き(風)の文字と印刷された字を見てる時の脳活動を比較すると、たとえばこれとか(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hbm.21105/abstract )で言うと中前頭回、ちょっと惜しいけど運動をつかさどる体制感覚野に近いって話で、他にもいくつか検討があって、簡単に言ってしまえば我々は手書き文字を見ているとき、その手書き文字を頭の中でもっかい書いてる、ようなんですよ。

 だから皆さん、俺の字とかめちゃ下手ですけど読めるでしょう。って読んでもらったことはないですが、まあまあ、読めないことはないと思うんですけど、その理由のひとつは、書き順さえ正しければ頭の中でその字を書くところを再現できて、それで頭の中で俺のクソ字じゃあなくて皆さんの美麗な字の表象ができるんじゃあないかなとかそういうことを思うわけです。

 で、そういう意味ではですね、手書きの文字というのはあったかいよねというのはまあ、完全に同意はしかねるけれども、手書きの文字を見たときの我々の脳活動がプリントされた文字を見たときの活動と違う以上、完全に否定しきれはしないというところはあって、まあ人によっては自分の運動感覚が喚び起こされて、それでもって視覚単独よりはなんか複雑な心持ちになることで「暖かい」的な感じになることもまああってもいい。

 一方、世の中の出来事は沢山集めるとなんでも正規分布するということになっていて、そう考えると多分このケースにおいては、手書き文字を見たときに運動がぎょんぎょんに活動するタイプと、しーん、びくともしないよっていうタイプが、割合こそ少ないものの存在することが推察できるわけですね。まあどっちも疲れる・困ることは多々ありましょうが、「シーン」タイプの人はひょっとすると「はーいこれが『あ』ですよぉ~」という初期の学習のときに、我々が当然に視覚とともに運動表象も活性化して「『あ』だね」「うん『あ』だ」「『あ』以外の何者でもないなこれは」となり、書くのも容易、小学校とかヌルゲー、みたいになってる裏で、突然行書を見せられて「これが『御』ですよぉ~」って言われたときに「どこがやねん舐めとんのか」みたいに我々が感じるのに近い状態になってる可能性もあるわけである。

 そういうひとびとのために例えば「空書法」などという、微細運動ではなく粗大運動を使ってやっていこうという方法もないではないみたいなんですけど、まあねえ。大変だろうなあ、とか思うわけです。

 で何が大変かって、今日はせっかくのプレフラだというのに、「行書を中学校で習う」ということを聞いただけで「何が行書だ調子に乗りやがって(※誰も乗ってませんよ)」という一念でこういう情報の収集に1時間、更に近況ノートを書くのに1時間とはいわないけど休み休みでトータル1時間、だって今5時だもんな、になった俺ですよ。

 せめて例えばここでこういうことを書いてないで、文字を書くのが苦手な人コンサルタントの事件簿みたいな形にして、スカした医者? コンサル? がある字が書けなくて困ってる子どもの本当の苦手さをそれこそMRIとか使って見抜いて、で空書法で対処してやったー! ゼミで出たとこだ!! みたいになるハッピーエンドの話を書けばそれなりに「これは取材ですよ」って言えるんですけどねえ。それは書く気にならないな。誰か使ってもいいんですけどね。これだけの断片情報で俺がどういう話を想像したのか分かり、かつ題材不足で悩んでいる人がいればぜひ。

2件のコメント

  • こんばんわ

    地下歩行空間での書道ならコレです!

    弘前で「自由すぎる」書道展 「北斗の拳」「残念な体の生き物」などテーマに

    https://hirosaki.keizai.biz/headline/728/

    行書じゃないですけど
  • これすげー面白いですね。これなら見たい。
    俺は心が汚れた人間なので北斗の拳って言うとぱちんことかを思い出しちゃうんですが、それ繋がりで言うとバジリスク~甲賀忍法帖~のタイトル書道とかみたいですね。
    「鬼哭啾啾」とか「夢幻泡影」とか。たまに「激熱」とか。激熱はちょっとぱちんこ(スロット)に寄せすぎた感はある。
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