百物語、は知ってるだろう。怪談を百語ると、何かしらの怪異が起こると言われてる。近況ノートは怪談ではないから、もちろん百では問題ない。ただ。百物語から分かることは、架空の話も蓄積すれば現実に何かを起こすことだ。たくさん何かがあると、そこに何かが紛れるということだ。四百を超えて、誰も全てに目を通せない近況ノートは、そういう何かの格好の棲家だ。境界に湧き出す何か。架空と現実の境目に潜む何かの。僕は猫を殺したことなんてない。赤子を貪り食ったことも無論、ない。未来から訪れた何者か、と出会ったことなんて書くはずもない。なぜなら近況ノートは現実を記すところだから。そんなことを記すはずがないんだ。それなのにーーそれなのに、それは、そこにある。そんなことを書いたはずはないんだ! 僕はもう、読みたくない。あなたも読まないで欲しい。そうしたら、それが無かったことになるような気がするからだ。僕の心からのお願いだ。