ニコ動「復旧に1カ月以上」 ランサムウエアなど複数攻撃
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2024年6月14日 15:27 (2024年6月14日 20:19更新)
出版事業もシステム停止で生産や出荷に影響がでている
KADOKAWAは14日、サイバー攻撃を受けて停止したグループのサービスの完全復旧に1カ月以上かかる見込みだと発表した。8日から動画共有サービス「ニコニコ動画」を停止しているほか、出版事業でも書籍の受注や工場、物流のシステムを止めている。大規模な攻撃でバックアップが機能しなくなり、影響が長期化することになる。
原因については、グループ会社のデータセンターがランサムウエア(身代金要求型ウイルス)を含む大規模なサイバー攻撃を受けたと説明した。子会社のドワンゴの手掛けるニコニコ動画は復旧に1カ月以上かかる見込みだ。KADOKAWAのシステムは来週以降、段階的に正常化させ、6月末をめどに復旧を目指す。現時点で個人情報やクレジットカード情報の漏洩は確認されていない。
サイバー攻撃の発覚後にサーバーをシャットダウンしたが、遠隔からサーバーを起動させる攻撃を受けた。このため電源ケーブルや通信ケーブルを抜いて物理的に封鎖する必要があり、すべてのサーバーが使えなくなったという。バックアップも用意していたが、機能させられなかった。
影響はKADOKAWAの主力事業である出版や、経理業務にも及んでいる。
出版事業ではシステム停止により書籍の出荷数量が減るほか、新刊の刊行や重版の制作が遅れる可能性がある。大手書店からは「KADOKAWAの倉庫から本が届かない」との声が出ている。出版・IP(知的財産)事業の2024年3月期の売上高は前の期比1%増の1419億円と全体の半分以上を占める。
経理業務では決済システムが一時的に機能停止状態となっている。大半の取引先には期日通り支払いできる見込みだが、一部で遅れる可能性がある。
ニコニコ動画はすでにシステム全体の再構築に着手した。数百のシステムが連携して動くサービスをほぼ一から作り直す必要があり、復旧までに最低で1カ月かかるという。7月末まで生放送番組を停止する。
ニコニコ動画などを含む動画配信サービス「ニコニコ」の月額有料会員数は24年3月期末時点で117万人いる。過去に投稿された動画はグループのデータセンターとは別に管理しており、安全に保存されているという。
KADOKAWAでは8日午前3時半ごろ、グループの複数のサーバーにアクセスできない障害が発生した。幅広いサービスが使えなくなった。
同社のホームページは閲覧できなくなり、臨時のホームページを立ち上げ、株主総会や決算の関連資料を掲載している。通信制高校「N高」「S高」でも学習用のアプリ「N予備校」が一時使えなくなった。
KADOKAWAの夏野剛社長は14日に公開した動画で「ユーザーや読者、クリエーター、作家、取引先の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしおわびする」と陳謝した。
サービスの停止に伴いニコニコやN予備校の6〜7月分の月額会員料を補償する予定だ。25年3月期の業績への影響は現時点では「不明」とした。
KADOKAWA株の14日の終値は3145円と、サイバー攻撃発覚前の7日終値から220円(7%)下落した。