今日は遺言を預かりました。

 今日は遊君のモデルと、昼から飲みました。

 僕も遊君も昼呑みは初めてで、とても貴重な体験をさせてもらいました。

 場所は新宿の思い出横町で、一度大火にあった経験も知っていましたが、飲み屋の文化は生き残ったんだなと思わせてくれました。

 共通のトイレは思っていた以上に清浄で、そこから先は各店舗の裏口になっていました。

 そして、僕らの飲み始めた十一時三十分には客なんていなかったのに、いつの間にかお店は満席で、素晴らしい繁盛だと思いました。



 遊君のモデルは、欧州に旅立つに当たって、僕に遺言を託しました。



 およそ、彼の死に際には似つかわしくない言葉ですが、僕は受け止め、あるいは僕の方が先にくたばったら、その言葉を我に捧げんと、伝えました。


 彼は齢五十年を迎えるに辺り、相応の覚悟を決めて渡欧します。

 僕が彼に課そうとしていた目標は、彼にとって紛う方なき目標でした。

 僕の目には彼がまぶしく映りました。

 それは彼の現在が禿頭であるからではなく、その意思の強さの籠もった視線から来るものでした。

 僕は、彼が僕に託した遺言を果たすようなことを彼には許しません。

 それは、彼も同じ気持ちでしょう。

 それでも、彼が欧州というフィールドを得て、活躍してくれることを願ってやみません。



 旅立つ 彼の者に 幸有れかし



 彼は頑張らねば成りません。

 そして、それに倍するくらい、僕も頑張らないと成りません。

 志の炎を消さない友人に巡り会えたことに感謝を。

 そして、今生での彼に栄冠を。

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