こら、あかん……(その二)

(その一よりつづく)
 
 
 
 日本国憲法第十三条
 
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 
 よく見てご覧。
 
 『生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については』
 
 『公共の福祉に反しない限り』
 
 尊重を必用とする、わけだ。
 
 どんなにセクシャルマイノリティを「個人個人の個性の表れ」と評価して、さもこれまでの伝統的社会通念が「古臭く蒙昧なものであり」、これからはセクシャルマイノリティを尊重してこそ「進歩的で、文化的な生き方なんだ」と、さも物わかりがいい者として振る舞おうとも、男性の姿で女性専用プライベート空間に入り込む行為や、逆に女性の姿で男性専用プライベート空間に入り込む行為は「公共の福祉に反する」行為であり、きちんと「違法」と定義して処罰されるべきだ。
 
 
 
 そもそもさ、男性の姿で女性用トイレに侵入するとどんな罪に問われるか知ってる?
 
 
 
 「男性の姿で女性用トイレに侵入」すること自体を違法とする条文は刑法にはないんだよ。
 
 刑法第十二章「住居を侵す罪」にて(住居侵入等)の耳書きで記述された「第百三十条」にはこうある。
 
 「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」
 
 逆にいえば「正当な理由」さえあれば、「男性の姿で女性用トイレに立ち入る」ことは違法じゃないんだ。
 
 これでいいの?
 
 妻や娘といった、かけがえがなく大切にしたい「女性」としての家族を持つ俺は、嫌だよ。
 
 
 
 まずさ、刑法130条を見ると「建造物」とある。
 
 これさ、緩いよね。
 
 たとえばショッピングモールに設けられたトイレとか、「客として売り場や非常階段など建物内の設備を利用するために『建造物』に入っているんだから、特に「男性使用禁止」と明示されているわけでもなく、ただ看板や案内図などで「女性用」と書かれた空間に男性である私が入り込んで何が悪い」とかさ。
 
 もちろんそんな主張、警察にも検察にも判事にも「正統性がある主張」とは認められないだろうけれどもさ、上記の屁理屈が一定程度成り立つ段階で柔くない?
 
 仮に「男性使用禁止」と明示されていても、当の男性本人が「私の心は女性だからオッケー」と判断したら守られないしさ。
 
 それどころか、LGBT差別禁止法が施行された後なら「正当な理由有り」となるんだぜ。
 
 
 
 ただし、軽犯罪法の第一条、二十三号にはこんな風に規定されている。
 
 「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」
 
 また「正当な理由」が出てきた。
 
 これがある限りLGBT差別禁止法が施行されたら、男性の体で女性用トイレ、女湯に入っても「正当な理由有り」になるし、そういう男性を排除しようとしたら「差別禁止法違反」になるかも知れない。
 
 更には「密かに覗き見た者」なんて余計な定義が紛れ込んでいる。
 
 堂々と直視したならいいのかね?
 
 あるいは「心が女性なんだから、そもそも周囲の女性の姿を見るために入ったわけではない」と主張されたらどうするのかね。
 
 そもそも軽犯罪法には「密かに覗き見た者」との定義はあっても、「異性の体型で侵入した者」という定義はない。
 
 
 
 男性の体で、女性専用の閉鎖空間に立ち入る行為自体、もはや軽犯罪ではなく、その侵入行為の延長で強姦や強姦致死があり得ることを想定すれば、刑法できちんと定義すべきだと思うが、「男性の体で女性専用の閉鎖空間に立ち入る行為」を定義した条文がない以上、その周りの使えそうな法律をなんとか適用させて、それでようやく成り立つ状態だ。
 
 
 
 そっちを整備する法が先なんじゃね?
 
 
 
 それともLGBT差別をなくすために、「(特に女の子が)公衆トイレを使う時は状況を確かめたり、他の同性の人物と二人以上で入りなさい」という、のびのびと外出することがはばかられる社会にしたいのかね?
 
 
 
 「今の刑法や軽犯罪法で、十分裁けているのだから、ことさら『男性の体で女性専用の閉鎖空間に立ち入る行為』のために法律を用意する必要なんてない。
 
 なんて主張するとしたら、そいつはパカだ。
 
 もし、そいつが弁護士だったりしたら、パカを通り越して社会の混乱を期待している、反社会分子だ。
 
 
 
 そもそも、明確に定義されていない行為を、既存の適用可能な条文を理由に裁こう、という姿勢自体、立法府の怠慢であり、行政府の越権に近い傲慢であり、司法府の驕慢による牽強付会だ。
 
 webをたゆたっていると、面白い記述に巡り会うことがある。
 
 「トイレや更衣室などは、「男性は男性用を使用して、女性は女性用を使用する」ことを想定して設けられています。 そのため、女性用の場所に身体的には男性である方が立ち入ると、管理者の意思に反した「侵入」ととらえられて、刑法第130条の「建造物侵入罪」が成立する可能性があるのです。」
 
 また一つ、面白い前提条件が出てきた。
 
 『管理者の意思に反した侵入』
 
 ということは、管理者の意志に反しない侵入なら良いということになる。
 
 これ、現行の法規の段階ですでに危うさを孕んでいる。
 
 とある大型ショッピングモールが、実は建物は個人の所有及び管理に委ねられたりしていたとする。
 
 で、苦労知らずの二代目、三代目が、法人化したその建物の管理法人を引き継ぐ形で管理者になったとする。
 
 その引き継いだ三代目には、悪い遊びをともにしてきた悪友がいて、「女子トイレ入ってみたいんだよね」といってきたので「お前がMtFだって事にすれば、管理者の俺が認めたことにするよ」なんて勝手な約束をして、「うちのモールでは、彼は女性専用トイレのみ使用可能」と決めてしまえば、その男性が女性専用トイレに立ち入っても『管理者の意思に反した侵入』では無いので、警察を呼んでも管理者が出てきて、そのまま手放しとなる、というストーリーすら成り立つ。



 人類の長い歴史において、LGBTが長い間社会の許容範囲外におかれていたのには、それが相応であるという実体があるからだ。
 
 それも考慮せず、ただ「なんだか少数の人が苦しんでいるから、その苦しみから解放してあげたい」というセンチメンタルな動機で、今まであった秩序を壊すような凄し方を法律の上でも許容してしまえば、そのほころびからやがて今の秩序は崩壊する。
 
 ましてや「差別禁止」なんて法律を作れば、新たな貴族階級を生み出してしまうし、そもそもその法律は、憲法第十二条、第十三条、第十四条二号の精神と照らし合わせて、違憲である。
 
 同性婚に関する考察でも書いたが、LGBTの問題に対して法整備を進めてその主張をくみ取ろうとすれば、まず改憲から始めなければならない。
 
 改憲も主張せずに、ただ法案だけ新設して通そうとする行為は、その行為、主張とも反社会勢力のそれだよ。
 
 
 
 だから良識ある国民は、自分の愛する家族のためにも、ノーマルな国民も、LGBTに生きる国民も、LGBT法案には真っ向から反対しなければならないよ。
 
 それが、「みんなが幸せに過ごす道」さ。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する