いやもう、「こんなにもバカでして」という話し。

 三幕構成というのがある……らしい。

 まあ、「商品としての物語」を作るに当たっての鉄板の法則らしい。



 正直、徹攻兵「アデル・ヴォルフ」を書く時には必要なかった。

 徹攻兵という設定自体は、十何年も前から考えていたものだし、五名の徹攻兵で一チームという構成も、その頃から考えていた。

 そして二〇二一年の晩冬、奇跡のように舞い降りてきた双極性障害の躁の状態を金曜の夜から土曜の夕方に掛けて配置することで、それこそ「アイデアが石油のように湧いて止まらない」状態で、しかしうんうんうなりながら、インターネットの色んなサイトで調べたり、確認したり、改めて知ったりして、三ヶ月ちょっとくらいで書けた。

 着甲するだけで銃器の攻撃を無力化する謎の特殊能力を持った兵士がドイツで発見されることも、十何年か前から決めていたことだった。

 装甲服に世代があることも、世代ごとに倍々ゲームのように能力が向上することも、十何年か前から決めていたことだった。

 でも、中の人の方も世代交代するなんて、まだ、赤ん坊の颯太(仮名)を抱えた当時の僕にはなかった発想だった。

 ちなみに、輝巳の最後は、全く別の航空戦闘機の小説を書きたいと夢想していた時に考えていたラストシーンのあり方だった。

 発動条件はもっと技術的に困難な、神業レベルの制御力をもってし得ないと発動しない設定だった。

 比較的安易な条件で発動することにした代償として、徹攻兵運用規則の比較的若い条項に「着甲した徹攻兵は、本邦及び他国を問わず、国家元首もしくはそれに相当するとされる人物の所在する場所から、半径十キロメートルの範囲への立ち入りを禁ず」という規則が作られることになった(のは、本当は「狼を狩る狼『ヤクト・ヴォルフ』」で書くはずだった設定だ)。

 (一旦話が飛ぶが、皇族が皇居周辺に偏在する現状を、皇室はどう考えてるんだろうと、その資質を怪しく思うことがある。原爆一発でこの国の国体が死ぬぞ)



 とまあ、長々書いたが、「王立女子士官学校『アデル・ヴァイス』」を書くに当たって、困ったことが二つ。

 百合小説を書きたいという志はよろしいものとして、



 あれ、俺そもそも女じゃねーぞ?



 という極めて根本的なことと、



 ゼライヒの紹介に百合を持ち込んで来るとか、どうやって盛り上げるつもりなの? 俺、バカじゃねーの?



 という、極めて理知的な自己分析だった。

 ところがカクヨムには、そんなバカでもバカなりに何とかできるメソッドを投稿している出版社様があって、そちらの投稿を読むだけで、「ほほー」とか「なるほど」とか勉強になった。

 で、もともと「徹攻兵」自体、設定をエクセルでまとめていたこともあり、キャラの身長やサイズ、髪の色や瞳の色といった外形的要素、特徴、そして、主要四キャラの思いと、想いの向きと、葛藤のバランスなんかをまとめていた。

 そうして、リーエとチーヤの物語が少しでもリズム良い展開を取れれば、と、三幕構成のメソッドに従って、第一幕、PP、第二幕前半、MP、第二幕後半、PP、第三幕とコマを分けて、それぞれの段階で起きる出来事を箇条書きに書いた。

 ただ、そこには、ゼライヒの地理や歴史を語る章など存在していなかった。



 なので、今後の展開をもう一度整理するために、これまで書いてきたことが、何幕に当たり、これから起きる出来事は何幕に当たるかを整理しなければならない。



 「設計書を念頭に作成していたら、設計書とずれてきたので、『設計書を改訂する』」とは、幾ら愚鈍な僕でも、本末転倒なことぐらいはわかる。

 まあ、そもそも、ゼライヒの地理と歴史は、それぞれ一話ずつで終わる予定だった。

 でも、枢軸国側として、ドイツ敗戦後も戦闘を継続した欧州随一の国という基本設定に始まり、カソリックでも、プロテスタントでもないオーソドックスの八端十字架を掲げる人々という設定、そして太古の精霊信仰を失っていない人々という設定、フィンランドとソビエト連邦の間に位置する、としたら、そばにサンクトペテルブルグがあり、旧都としての要衝に近すぎる地政学上の国家の位置、そして古くからの伝承を今なお受け継いでいながら不当に「敗戦国」として負けた地位をぬぐえない国という徹攻兵の排出条件、高く雪深い山々に囲まれた故に国土を荒らされる経験を余り持たない国、等々をバランス良く取ろうとするうちに、ふくれあがってしまい……、明日を含めてあと六回、ゼライヒの歴史語りがつづくのです。



 バカだなあ、俺。



 でも、一つだけいいこともあった。

 この歴史語りが収まったら、リーエとチーヤ、そしてもう二人の登場人物の語りの中で、少しずつゼライヒの成り立ちを紹介することから解放されて、より、心情面の揺れ動きの描写に、行を使えることになる。

 そんなこんなで、三幕構成のプロットを書き直しています。

 結構予定していたイベントが消化しきれなくて、ちょっと困ったことになりそう。

 でも、テンポの良い展開を志して、進もうと思います。

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