原作者は、見た! 白熱と爆笑の舞台裏稽古レポート
【※※※ 史上最大級の注意喚起 ※※※】
皆様、心してお聞きください。これから私が語る内容は、100%、いや1,000%フィクションです。私の脳内にある「あったらいいな劇場」で連日上演されている、架空の舞台の、架空の稽古風景です。登場する女優AさんBさん、演出家さん、その他すべての皆様は、私の妄想が生み出したイマジナリーフレンドです。
決して「あの作品のことかな?」などと現実世界と結びつけないでください。 もしそんな気配を察知したら、私はこの文章を光の速さで消去し、シベリアの森の奥でキノコとして暮らす覚悟です。いいですね? 約束ですよ!
さて、そんな鉄の掟をご理解いただいた上で、私の最近の心躍る体験についてお話しさせてください。
先日、ありがたいことに拙作の舞台化(という設定)の稽古場を見学させていただきました。そこは、ただの稽古場ではありませんでした。汗と情熱が飽和して、空間そのものが意思を持っているかのような、まさに「戦場」でした。
第一幕:魂が火花を散らす「白熱の応酬」
その日、私が見たのはクライマックスシーン。
追い詰められた主人公(女優A)が、最後の力を振り絞って魂の叫びを放つ場面です。
「舐めたらいかんぜよ!!」
空気が、ビリビリと震えました。彼女の全身全霊を乗せた言葉は、単なるセリフではなく、一つの現象でした。その場にいた誰もが息を呑み、完璧な「静寂の間」が生まれる。これぞライブ、これぞ演劇の神髄。
そして、その神聖なまでの覚悟を受け止めた宿敵(女優B)。彼女は一瞬の驚きの後、こうべを垂れるどころか、まるで最高の獲物を見つけたかのように、愉悦に口元を歪ませてこう返したのです。
「じゃ噛んだらえーんか! 噛み付いたらえーんかいな!」
鳥肌が立ちました。主人公が命懸けで築いたシリアスな世界を、たった一言で、無垢な狂気でひっくり返してみせた。脚本という設計図を超え、役者の魂がぶつかり合う瞬間の凄まじさ。私はただ、その熱量に圧倒されるばかりでした。
第二幕:神が舞い降りた「爆笑のNG」
しかし、舞台の神様は気まぐれです。
数日後、再び同じシーンの稽古に立ち会った私を待っていたのは、全く別の奇跡でした。
再び、あのクライマックス。
張り詰めた空気の中、主人公役のAさんが、渾身の力を込めて叫びました。
「か、噛んだらいかんぜよ!!」
………。
………。
時が、止まりました。
セリフで、セルフNGを宣告するという前代未聞の事態。
最初に沈黙を破ったのは、宿敵役のBさんでした。「ぷっ…!」と吹き出すと、「だって自分で『噛んだら、いかん』って言っちゃってるじゃん!」と涙目でツッコミ。
それを皮切りに、稽古場は大爆笑の渦に。
真面目な顔でドン引きする演技をしていたはずの取り巻き役たちは崩れ落ち、腕組みをしていた演出家は腹を抱えて震えています。
当のAさんは、顔を真っ赤にして床にうずくまり、「もうお嫁に行けない…」と呟いている始末。
涙を拭った演出家が、叫びました。
「(笑)カット! カットーッ! 最高だよ、お前ら!!」
その一言で、張り詰めていたカンパニーが、一つの温かい家族になったような気がしました。
終わりに
完璧を目指すプロフェッショナルの熱意と、人間味あふれる温かい失敗。その両方を見ることができた私は、世界一の幸せ者です。自分の生み出した物語が、こんなにも素晴らしい人たちの手によって、想像もつかないほど豊かで愛おしいものに育てられている。
原作者として、これ以上の喜びはありません。
(…と、まあ、こんな素晴らしい出来事が本当にあったらいいな、という私の壮大なフィクションでした!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!)