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名刺を使った無意味ないたずらの巻

仕事にもよるが、社会人として数十年が過ぎると「まったく無意味な名刺」が溜まってくる。

「誰なんだよ!」

と、いちいちツッコミを入れる気にもならないような、顔と名前どころか、社名も肩書もまったく見覚えのない名刺たち……。

これで定年退職の年齢になったら、多い人で数千枚は溜まるのではないだろうか。

捨てるのはもったいないし、有効活用したいものだ。

そこで、適当な名刺を選んで、その名刺の人物になりきって、スーツを着てどこかへ挨拶に伺うというのはどうか。

何の意味もない、ほぼ「いたずら」に近い遊びである。

ある会社や店を急に訪れて、

「とつぜん、失礼いたします。わたくし、こういう者でございますが……」

と、その人になりきって名刺を渡す。

名刺に書いてある情報に合わせて、

「株式会社〇〇の、✕山△助と申します」

などと、挨拶をする。

「今日はご挨拶のみで……。突然のご訪問、たいへん失礼いたしました」

話が長引くと困るので、風のように去ってゆくのだ。

うまくやれば冷たい水か、お茶くらいは飲めるかもしれない。大きめの会社なら、先方も畏まってくれるだろう。

老後のちょっとした楽しみとして、取っておきたい。

それに案外、都市伝説や怪談の種を蒔くことになって、文化的にも貢献できるかもしれない。

「死んだはずのあの人が、突然、挨拶にやって来たのです(しかも命日に)!」

うーん、こういう話の出どころが分かったような気がする……。

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