急に誰かがいなくなり、探すことになるタイプの「失踪人探し」という話の型は、現代ミステリやチャンドラー、村上春樹に限らず、江戸時代の敵討ち、仇討ものも同じことである。SFにも「異星人が地球人に紛れ込んでいる→探す」系の話がある。
この裏返しで、急に誰かが帰ってくる、戻ってくる系の話は、その人が迷惑な肉親の場合、家族のふりをした他人の場合、外面や内面が変貌してしまった肉親の場合、など、またあれこれある。大抵は受け止める側の家族の葛藤が話のメインになる。
あの世から死者が戻ってくる話となると幽霊譚になり、ゾンビ物にもなる。この場合は受け止める側が怖がったり、お祓いをしたり、逃げたり戦ったりである。
受け止める側が苦悩するのではなくて、受け止める側が「誰もいない」という状態を考えると、実はそれが無人島に漂着した人の話になるのかもしれない。