ウッドハウスの「ブランディングズ城のスカラベ騒動」を読み終えた。
先日、たまたま図書館で見かけた「1913: 20世紀の夏の季節」(1913年の事件や話題を集めた本)の翌年が第一次世界大戦の勃発、1915年に出たのが「スカラベ騒動」なので、同時期と考えると感慨深い。
「スカラベ騒動」は、あまり古さを感じさせないコメディなので、1980年代に書かれたと言われても信じるだろう。
日本ではこの頃(1915年前後)に漱石の「こころ」や「道草」、泉鏡花「日本橋」、森鴎外「阿部一族」などが書かれている。
1915年の「スカラベ騒動」はミステリのパロディのような趣があるが、本格ミステリの黄金期はその後で、1920年のクリスティ「スタイルズ荘怪事件」以降、ヴァン・ダインやクイーンが続くのであった。
どちらかというとホームズ物の一連の短編や長編が終わる時期が1915年頃になるので、中間くらいの雰囲気があると考えると、話の進み方や洗練ぶりに納得できる。
中盤はかなりゴチャゴチャするものの「終わりよければすべて良し」と言いたくなるようなスマートな終わり方なので、後味がよい。