岩波新書の「玄奘三蔵、シルクロードを行く」を半分くらい(第三章)まで読んだ。
三蔵は「唐から出てはいかん」と言われているのに、インドを目指して旅に出てしまう。
これが17年にもおよぶ旅の始まりである。
無謀にもほどがある。
金銭はともかく、水や食料やその他はどうするのか、と思っていたら比較的早い段階で、ある国の王様からプレゼントされる。
しかし旅の途中は「山族の襲撃」だの、山越えでは「10人中、3.4人は凍死した」だの、生きているのが不思議なくらいである。
実際、「帰りにはまた立ち寄って下さいよ」と国王と約束したものの、帰路で立ち寄ると国ごと滅んでいたり、親切にしてくれた国の王様が三蔵を見送ったすぐ後に殺されていたり、危険すぎてストーリーにならないような感じがある。
そして、細部の記述がない。
にもかかわらず面白いので、逆に、
「普通の小説の描写って何?」
と考えてしまう。
この本にしても、三蔵が旅を終えてから書いたという「大唐西域記」にしても、伝聞のそのまた伝聞のそのまた伝聞のようなものなので、実態は遥か遠く、霧の彼方にあるようなものだ。