「キルプの軍団」は終盤で大きな動きがあり、スリルとサスペンスと充実感をもたらしてくれた。
読後の余韻が「グワーン」と胸や頭で響いている。
本作は比較的、読みやすい部類に入るはずだが、それでも微妙に独立しているような、いないような、他の大江作品の世界と共通しているような、そうでもないような点があって分かりにくいことは確か。
しかし以前はまず読み通せなかったような内容だし、読めないと思っていた本がかなり時間を置いてから読めたのは嬉しい。
「外国語の本を原書で読みつつ、日本語訳と研究書を参照しつつ、考えや理解を深めつつ、創作し励ましに結び付ける」
という姿勢の実例がこの作品なので、そういう意味で理解が進んだ。
大江作品はまた別の作品も読みたい。その一方で、癖のない文章を読みたくもあるので、久々に「同時に何冊も読みたい」「同時に幾つもの作業を並行して進めたい」と感じている。
20代の頃はほとんど常にそう感じていたよな……、と急に思い出した。